2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20820006
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金 情浩 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 専門研究員 (70513852)
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Keywords | fMRI / かき混ぜ語順文 / 文理解(処理) / 線形順序 / 言語習得 |
Research Abstract |
1980年代には、日本語の「かき混ぜ文」が英語に見られる疑問詞の文頭への移動(WH移動)や話題化などのように、名詞句が意味役割上の解釈を受ける位置と異なる位置で発音される現象と同様に移動の一種であるかどうかが理論上の争点となった。1980年代末までには、理論言語学的には「かき混ぜ」もWH移動などと同様に統語的な「移動」の一種であるという結論が得られた(Saito 1985など)。1990年代に入って失語症の研究から「かき混ぜ」が移動の一種であるとする分析を支持する証拠が見つかった。このように、「かき混ぜ」が移動の一種であるとする分析は、理論言語学と神経言語学(失語症研究)双方の観点から支持されている。これらのことから、「かき混ぜ」がWH移動など他の移動と同様の脳内処理基盤を持つであろうことが推測される。この推測の妥当性を検証するために、Kim et.al. (2009)は、日本語母語話者を対象に脳機能画像法(fMRI)による日本語他動詞文の文理解(処理)時の脳活動を計測した。その結果、「基本語順文」と「かき混ぜ文」の文理解時に、左脳の下前頭回(ブローカ野)やウェルニッケ野など主に言語処理に固有に関与する言語中枢領域に賦活が観察され、このことから2つの語順の理解(処理)時に関わる認知処理はかなりの程度共通していることが示唆された。また、「かき混ぜ文」の文理解時に有意に働く賦活領域を特定するために行った「基本語順文」との直接比較では、左脳の下前頭回(BA44/45)に脳活動の上昇が観察された。この結果は、移動操作による統語構造の複雑さと下前頭回を含むブローカ野活動の上昇は、英語やドイツ語などの個別言語特有のものではなく、移動の統語現象を持つ言語において普遍的なものであることを示唆するものである。
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Research Products
(3 results)