2009 Fiscal Year Annual Research Report
平安鎌倉期における歌学と仏典注釈の相互交流についての学際的研究
Project/Area Number |
20820017
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
岡崎 真紀子 Shizuoka University, 人文学部, 准教授 (30515408)
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Keywords | 日本古典文学 / 平安時代 / 鎌倉時代 / 歌学 / 和歌 / 仏典注釈 / 悉曇 / 韻学 |
Research Abstract |
年度の前半では、昨年度に引き続き、平安後期から鎌倉期にかけての歌学関係の資料と、仏典注釈の資料の双方を読み込み、両者がどのように相互に関係しているかを具体的に検討した。とくに、前年度から手を付けていたものの未だ検討が不十分だった、仙覚『萬葉集註釈』について重点的にとりくんだ。とりわけ着目したのが、仙覚の思考に、仏教の悉曇学の考え方が投影されていると考えられる部分である。それらの部分については、平安期から鎌倉期にかけての和歌・歌学の表現分析という文学研究の側からの観点で斬り込み、独自な成果をあげることができた。年度の後半では、本研究の成果のまとめとして、平安鎌倉期の歌学書の叙述から、歌学と仏典注釈の間に相互交流が認められる箇所を抜き出したものを、検索可能なデータ化して整理した。当初の研究計画では、データベースの形にした報告書の作成を予定していた。しかし、未だ考究が中途段階であって、データ化した資料はきわめて有益ではあるものの公表に足る形にはなっていないと判断し、今回は報告書の作成は見送ることとした。公表の機会は改めて設けたい。 総じて、本研究は、平安鎌倉期の歌学について、仏典注釈との交流という従来にない観点から考察する端緒となった。いわば、研究の萌芽を植え付けることができたと言えよう。これを土壌として、今後さらなる発展的な研究へと結実させたいと考える。
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