2008 Fiscal Year Annual Research Report
復原された『夜の寝覚』と平安時代後期における政治状況の相関についての研究
Project/Area Number |
20820026
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
赤迫 照子 Hiroshima University, 図書館, 助教 (70452612)
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Keywords | 日本文学 / 平安時代後期 / 夜の寝覚 / 寝覚物語絵巻 / 摂政 / 関白 / 源氏物語 / 御堂流 |
Research Abstract |
本研究は1、末尾欠巻部分に相当する「 寝覚物語絵巻」伝来と享受の調査を通して復原の手がかりとなる新資料を捜索することと、2、『夜の寝覚』世界の基盤をなす政治構造の分析によって、物語全容の解明と作品の再評価を目指すものである。平成20年度は基礎作業を主に行った。1については、「寝覚物語絵巻」を模写した江戸幕府御用絵師住吉具慶・狩野春川院養信関連書籍の購入や文献複写、国会図書館・国立東京博物館所蔵模写本の調査、奈良県大和文華館にて「寝覚物語絵巻」伝来に関する情報収集、「寝覚物語絵巻」旧蔵者館林藩主秋元氏関連資料の捜索と収集を行った。2については、まずは年立の再検討に取り組んだ。その際、改作本がどの程度まで原作本の欠巻部分推定資料として扱えるのかを分析するために、原作本と詳しく照合し、共通点と相違点を抽出した。また、現時点では補完できる資料が発見されておらず、不明だと断言せざるを得ない原作本の箇所について確認した。これらはパソコンにデータ入力し、一覧できるようにしている。その一覧からさらに、政治関係の条をリストアップした。この作業の過程において、『夜の寝覚』と平安時代後期、特に藤原頼通の時代における政治状況の類似点を多数発見した。これによって、『夜の寝覚』が御堂流による摂関体制を強く意識して物語世界を構築しているのが明らかなった。一世源氏を絶対者として描いた『源氏物語』との比較によっても、藤原摂関体制を基盤とする『夜の寝覚』の特質が浮き彫りになった。
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