2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20820041
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
福永 真弓 Rikkyo University, 社会学部, 助教 (70509207)
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Keywords | 環境倫理 / 多声性 / 環境正義 / 米国先住民と環境政策 |
Research Abstract |
本研究の目的は、応用倫理学として岐路に立つ環境倫理学を、規範的正義論を理論的土台とする現場から現場へ応答する環境倫理学として再構成し直すことであった。今年度は主に、ユロックに関する事例調査を行ったが、その資料収集や聞き取り調査については、来年度に向けて基礎を作ることが出来た。特に、部族政府とのラポール関係が得られたのは大きな収穫であると思われる。 そのほか、環境正義と規範的正義論の関係性については、いくつかの研究会をはじめ、著作の中でもまとめることができた。特に今回特筆すべきは、理論的部分とフィールド調査(特にマトール川流域の事例について)をかみあわせ、本研究のテーマそのものについて、11月の応用倫理国際会議においてパネリストの一人としてセッションに参加し、米国の代表的な環境倫理学者であるAndrew Lightらと議論を交わすことが出来たことである。「現場から」「現場へ」応答する環境倫理学について、各国の事例を踏まえながら、学際的な議論をおこない、具体的な研究案をまとめることができた。 来年度の南山大学で行われる社会倫理研究所主催のシンポジウムにおいても、継続して議論をおこなうことを確認している。応用倫理学全体において、環境倫理学の新たな方向性を国際的に確認できたことは大きな収穫であったが、環境正義という議論を中心におくことによって、先住民研究や社会学など他の分野からの着目を得たことも大きな収穫であった。また、地域住民のエンパワメントをいう観点から、研究者のみならず、NGOや市民団体との議論が行えたことも大きな意義を持つ。事例研究を通じて、環境倫理学がどのような形で社会に密接に臨床的につながりうるか、応用倫理学としての可能性を問うことが出来る素地を作れたと考える。
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