2009 Fiscal Year Annual Research Report
『往生要集』注釈書の研究―良忠撰『往生要集鈔』の新出写本を中心にして―
Project/Area Number |
20820045
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Research Institution | International College for Postgraduate Buddhist Studies |
Principal Investigator |
南 宏信 International College for Postgraduate Buddhist Studies, 仏教学研究科, 研究員 (80517003)
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Keywords | 日本仏教 / 浄土教 / 『往生要集』 / 『往生要集鈔』 / 『往生要集義記』 / 良忠 / 東向観音寺 / 檀王法林寺 |
Research Abstract |
1、『往生要集鈔』所蔵寺院の調査。 東向観音寺(京都市上京区)と檀王法林寺(京都市左京区)の調査に加え、身延文庫蔵『往生要集鈔』写本の現存が確認でき、調査・撮影を実施した。 2、『往生要集義記』諸本対照表の作成。 前年度に引き続き、今年度は『往生要集義記』の諸本対照表を作成した。加えて新たに確認した『往生要集鈔』写本の対照表を作成中である。 3、印度學佛教学会の学術大会などにおいて口頭発表ならびに論文を寄稿 作成した対照表をもとに、現存最古の東向観音寺蔵本が示す『往生要集鈔』の構成と、『往生要集鈔』の内容を持ちながら『往生要集記』の外題をもつ檀王法林寺蔵本の構成を整理した。これにより、『往生要集鈔』から『往生要集義記』へと変遷していく様相を検討した。 研究計画では『往生要集鈔』と『往生要集義記』の二系統に大別していたが、作成した対照表で実際に構成を見ると、『往生要集鈔』諸本の中にも二種類の系統がある事を確認した。これにより現存最古の東向観音寺本(全八巻中三巻現存)が、古態を留めていることが判明した。これと同系統の伝本は尊経閣文庫本(全八巻現存)であり、これにより東向観音寺本では確認できない巻を尊経閣文庫本により補う事が可能となる。つまりこの二書は、相互的に補う事で具体的に『往生要集鈔』を二系統に分かつ事ができる。 また浄土宗の僧侶、袋中(1552~1639)の手沢本である檀王法林寺蔵本は、本奥書を有しており、書写過程の跡を確認することがができる。本書は標題が『往生要集(義)記』でありながら、『往生要集鈔』の内容構成を有し、かつ一部『往生要集義記』のみに見る文章を有している。更に何度も丁数を数えた痕跡が窺え、校正も加えている箇所も確認できる。この事から、檀王法林寺蔵本が『往生要集鈔』から『往生要集義記』へと推移していく草稿本的な特徴を有している。まさに分岐点にあたる事が予想され、現在検討を進めている。この成果は本年度の学会でも発表・寄稿予定である。
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