2009 Fiscal Year Annual Research Report
プラトンの中期対話篇における教育思想の展開に関する研究
Project/Area Number |
20820049
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
西尾 浩二 Otani University, 文学部, 助教 (20510225)
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Keywords | 哲学 / 教育思想 / プラトン / 魂 / イデア |
Research Abstract |
本年度は、前年度の研究成果を踏まえ、プラトンの中期対話篇(『国家』『パイドロス』など)における教育思想を支える重要な柱(哲学的背景)のひとつとして、引き続き「魂の三区分説」--魂(心)は欲望・気概・理性の三部分からなるとする説--を取り上げ、考察を深めた。その結果、気概と理性には、欲求対象の違いだけでなく、「思わく」と「知識」という認識論上の位相の違いが重要なファクターとしてあること、すなわち、美や正の「見え」や「思われ(思わく)」をめざす気概と、真に善いものを「知る」ことをめざす理性という対比が軸になっていることを、テキストと先行研究の検討により具体的に明確にした。そして人間の発達段階に応じたプラトンの教育構想(初等教育と高等教育)をはじめ教育論での多くの記述が、この哲学的背景に基づいて理解できることを、テキスト上で立証した。これらの成果はプラトンの中期対話篇における教育思想の展開をみるうえで有意義であり、研究成果の一部を、前年度の研究成果をも加えて学術雑誌に公表した(西尾浩二「<気概>の概念再考-プラトンの『国家』439e-441c-」哲學論集56(大谷大学哲学会),19-32,2009)。さらに、魂論に関する研究成果を踏まえて、プラトン中期対話篇の教育思想を支えるもうひとつの重要な柱である「イデア論」についても研究に着手し考察を進めた。しかし研究の途上で、イデア論の十分な理解には前期対話篇でのソクラテスの「何であるか」の問い(一般に「定義」の探求と解されているもの)の意義を解明する必要性が生じたため、前期対話篇のひとつ『エウテユプロン』の研究を行ない、それの一部について翻訳と研究用注を作成した。この翻訳は、今後さらに拡充したうえで、注と解説を付して公刊予定である。
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Research Products
(1 results)