2009 Fiscal Year Annual Research Report
古代イタリアの農業立地に関する考古学・経済地理学的分析
Project/Area Number |
20820062
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Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
池口 守 Beppu University, 文学部, 准教授 (20469399)
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Keywords | ローマ史 / 動物考古学 / MNI / NISP / 農業立地 |
Research Abstract |
本年度は3度にわたり,ケンブリッジ大学を拠点としてローマ時代イタリアにおける畜産業の研究を行った。1回目の5月の調査では,被服や染料の嗜好・需要の変化が羊毛生産に与えた影響を,J.L.Sebesta and L.Bonfante(eds.), The World of Roman Costumeなどから情報を得つつ考察し,Ph.D.論文での議論を補完することができた。 2回目の8月の調査では,まず動物考古学史料の扱いについて,MNI(最小個体数)とNISP(同定史料数)の扱いにまつわる議論を詳しく調査した。NISPのみが重視される昨今の学会の潮流とは違い,池口の方法論は,MNIをNISPの両者から擬似的な食肉発生量を得てその平均をとるというものだが,この方法論の正当性を主張するに足る論拠を得ることができた。また最新の動物考古学データも精力的に収集するなど非常に有益な調査となった。期間の後半には,ライデン大学のビントリフ教授とケンブリッジ大学のスノッドグラス教授が30年前から調査を続けているアテネ近郊のボイオティア地方の表面踏査に招かれ,最新の調査方法を学びつつ教授らと意見交換をすることができた。 当初,年度末の3月に3度目の調査を行うことを検討したが,勤務校の別府大学で行われる5月末の西洋史学会の準備と重なることが明らかとなったため,12月に前倒しで実施した。過去2年間の本研究の成果を踏まえてPh.D.論文を刊行するための最終作業であったが,作業をすすめるにつれて,イタリアの動物考古学史料と表面踏査史料を地域ごとに比較する必要性を認識し,刊行の際にはこの内容を含めることになった。
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Research Products
(1 results)