2008 Fiscal Year Annual Research Report
中世仏教絵巻の制作・享受・交流の「場」とその文化史的背景に関する調査研究
Project/Area Number |
20820071
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Research Institution | National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo |
Principal Investigator |
土屋 貴裕 National Research Institute for Cultural Properties, Tokyo, 企画情報部, 研究員 (40509163)
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Keywords | 美術史 / 日本中世 / 絵巻 / 伊勢物語絵 / 高僧伝絵 / 祖師伝絵 / 玄奘三蔵絵 / 対外観 |
Research Abstract |
本研究は、中世仏教絵巻の制作と享受、交流の実態を、仏教絵巻成立をめぐる様々な「場」やその文化史的背景から明らかにすることを目的としている。本年度は、作品調査を進めるとともに、研究成果公表、および本研究全体の方向性を見据えた研究を推進した。 調査は以下の作品を行った(研究開始月以前の調査含む)。 「掃墨物語絵」「源氏物語浮舟帖」(徳川美術館)、「柿本宮曼荼羅」「源氏物語浮舟帖」(大和文華館)、「山崎架橋図」「上畳本時代不同歌合絵」「建治本北野天神縁起絵」(和泉市久保惣記念美術館)、「随身庭騎絵」(大倉集古館)、「源平合戦図屏風」(智積院)、「遊行上人縁起絵」(金蓮寺)、「遊行上人縁起絵」(清浄光寺)、「誓願寺縁起絵」(誓願寺)、「春日曼荼羅」「佐竹本三十六歌仙絵」(湯木美術館) 本年度、本研究が主に対象とする鎌倉から南北朝期の作品を多く実見し得たことは、今後の研究推進にあたり極めて大きな収穫であった。 また、研究成果の公表に関しては、(1)「久保惣記念美術館蔵「伊勢物語絵巻」と伏見院周辺」(浅井和春監修『イメージとパトロン』ブリュッケ)および(2)「絵巻に描かれた旅-鎌倉・南北朝期における祖師・高僧伝絵の制作をめぐって-」(倉田実編『王朝文学と交通』(シリーズ平安文学と隣接諸学)竹林舎)をまとめた(いずれも2009年度中刊行予定)。(1)では、鎌倉後期の著名な作画工房、高階隆兼工房作とされてきた表題絵巻の再検討を行い、(2)では、鎌倉・南北朝期における祖師・高僧伝絵制作の問題から、中世絵巻が構築する世界認識の問題を論じた。 上記以外に本年度遂行した研究内容に関しては、さらに精度を高めつつ、次年度以降順次発表してゆく。
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