2008 Fiscal Year Annual Research Report
体育授業における「出来事」調査票の開発とその有効性に関する実証的研究
Project/Area Number |
20830003
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
厚東 芳樹 Hokkaido University, 大学院・教育学研究院, 助教 (80515479)
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Keywords | 小学校体育授業 / 高学年(5・6年生)担任教師 / 出来事への気づき / 態度得点 / パフォーマンス |
Research Abstract |
本研究の目的は, 小学校教師の体育授業中の「出来事への気づき(予兆)」とそれに対する「推論-対処」を導出するための「出来事」調査票の開発とその有効性を実際の学校現場の体育授業を対象として実証することにある。このとき, 「出来事への気づき」とは辻野のいう「教師や子どもの意図や計算を裏切って, そこに新しい状況や関係を現出させる事象」とした。 本年度は, 子どもからみた「技術的実践」の程度をみた態度得点の高い教師7名を対象に, 運動技能を高めた教師(3名 : 以下,上位群と称す)とそうでない教師(4名 : 以下, 下位群と称す)とで1授業あたりの「出来事への気づき」とそれに対する「推論-対処」の記述が量的・質的にどのように異なるのかを検討した。まず, 7名の教師の1授業あたりの「出来事への気づき」の頻度数は5渋6個であり, 先行研究(厚東ら, 2004)で認められた態度得点の低い教師のそれ(3.1個)よりも有意(P<.01)に多かった。次に, 上位群の教師と下位群の教師とで1授業あたりの「出来事への気づき」の頻度数を比較した結果, 両者の間に有意な差は認められなかった。続いて, 「出来事への気づき」に対する「推論-対処」を比較・検討した結果,上位群の教師の方が下位群の教師よりも「合理的推論-目的志向的対処」の記述の頻度数が有意(P<.01)に多かった。しかしながら, 「心情的推論-理解志向的対処」の記述の頻度数は, 下位群の教師の方が上位群の教師のそれよりも有意(P<.05)に多かった。 これらの結果から, 学習成果(態度得点, 運動技能)を高めた教師は, 授業中のモニタリング能力が長けていたこと, 運動教材との間に生じる子どもの技能的なつまずきの類型とそれに対する手立てを熟知していたことが具体的に明らかになった点で意義があった。また, これらの成果は優れた教師の反省的思考のあり方を追求していくものとして重要な手がかりとなるものである。
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Research Products
(3 results)