2008 Fiscal Year Annual Research Report
養育困難児童のWISC-IIIにおける認知特性についての研究
Project/Area Number |
20830004
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
久藏 孝幸 Hokkaido University, 大学院・教育学研究院, 特任助手 (00451443)
|
Keywords | WISC-III / 児童相談所 / アンバランス / 標準偏差 / 養育困難 / 児童福祉 |
Research Abstract |
本研究は、WISC-IIIを活用する教育・福祉・医療分野において、既存指標に加えて新たな定量的評価法の可能性を検討するものである。具体的にはWISC-IIIのプロフィールの各評価点の標準偏差を認知的アンバランスさの指標と見立てて、これが主に児童相談所等の児童福祉分野において、子どもを家庭養育する際の困難性の把握に活用する手段を検討した。 久蔵ら(2008)では児童福祉臨床において、子どもを含む家庭内外に様々な重複する問題があり、結果として家庭養育が困難になった児童について、WISC-III評価点のアンバランスを児童の処遇との対応の観点で分析した。その結果、既存指標よりもアンバランス指標がその後に必要とされる生活環境の構造化水準と相関をしていることを示した。 20年度は、第一に久蔵ら(2008)の対象に女児を加えて再度分析を行った。第二に、子どもを取り巻く問題の重複が少なければ、家庭機能の容量の中に子どもの問題性は掩蔽され、養育困難にまでは至らないとの仮説の元に、より幅広い対象に対して分析を行った。結果としては久蔵ら(2008)で見られた相関は、問題が重複している群では認められるが、重複力弐少ない場合には検出されなかった。以上から1)認知的アンバランスが大きいと家庭生活等に混乱が生じやすい、2)混乱はある程度は安全な養育環境の中に吸収され、必ずしも家庭生活自体の維持困難とはならない、3)家庭や本人の問題が重複している多問題家族は混乱を吸収しきれずに、アンバランスさが直接養育困難として表面化する。4)アンバランスさの指標は、養育する上での困難さを定量的に示す可能性を有している、以上のように考えられた。
|