2009 Fiscal Year Annual Research Report
養育困難児童のWISC-IIIにおける認知特性についての研究
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20830004
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
久藏 孝幸 Hokkaido University, 教育学研究院, 特任助手 (00451443)
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Keywords | WISC-III / 児童相談所 / 児童福祉 |
Research Abstract |
本研究では、児童福祉領域における児童のWISC-III式知能検査の解釈において、既存の指標とは異なる視点からの解釈を提案したものである。昨今の発達障害や児童虐待という、児童福祉臨床現場における火急というべき課題が多々存在する中に、新たに評価法の開発の一環として行ったものである。具体的には児童相談所に来所をした児童の中で、特に養育困難性が高い状況下にあると思われる児童のWISC-III式知能検査の、下位検査評価点のアンバランスさに着目をし、その不均衡さの程度と、児童相談所臨床における処遇との関係について調べた。下位検査評価点のアンバランスさについては、それらの標準偏差を用い、これを説明変数とした。また、処遇の困難度については、障害の有無や一時保護の利用の有無により群を分割した。これらを施設処遇の有無またはその対象施設を応答変数とし、順位相関分析、決定木分析等を用いて標準偏差との関連性を検討した。 その結果、WISC-IIIの指数や群指数などの一般的な評価指標は児童の処遇を予測し得なかったが、評価点の標準偏差は養育困難度が高いほど、処遇において必要とされる構造化の水準も高くなるという処遇との相関性を示していた。また、家庭機能がある程度保たれている場合には、そのような線形的な関係性は失われ、児童自身の特性としての能力的なアンバランスによる養育困難性は、大部分は家庭生活の中でカバーされていることがうかがわれた。さらに、そのような標準偏差を指標とした場合に、児童相談所臨床において、WISC-IIIの下位検査すべての評価点の標準偏差や、あるいは一部の群指数を構成する評価点の標準偏差などにより、処遇決定モデルを構成することができた。これらは児童福祉臨床において処遇検討時に活用できるモデルとなり指標となることが期待された。
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