Research Abstract |
防衛的悲観主義(過去の似たような状況において良い成績を修めているにも関わらず,これから迎える遂行場面に対して低い期待をもつ認知的方略)と方略的楽観主義(過去の高いパフォーマンスに対する認知と一致した高い期待をもつ認知的方略)は,パフォーマンスを高める認知的方略であることが示されている。 ところで,先行研究においては,なぜ両者の認知的方略がパフォーマンスを高めるのか,そのメカニズムについては組織的に検討されていない。そこで,研究1では,パフォーマンスにおける認知的方略の役割について検討し,両者の認知的方略がパフォーマンスを高める要因について探った。その結果,防衛的悲観主義者と方略的楽観主義者とでは,学業達成につながるプロセスが異なることが示された。防衛的悲観主義者はメタ認知方略を多く用い,そのメタ認知方略を使用することが高いパフォーマンスにつながることが示された。一方,方略的楽観主義者はメタ認知方略の使用が学業達成には影響せず,学習時間が多いことが高いパフォーマンスを保つことができる理由だと考えられた。 さらに,これまでの研究では,両者の認知的方略がどのようにパフォーマンスにつながるのかが検討されており,パフォーマンス後の影響については検討がされていない。そこで,研究2では,パフォーマンスが失敗に終わった時に,DP者およびSO者がどのような感情を抱き,どのようなコーピングをとるのかを比較検討した。また,これまでの研究では学業領域における認知的方略を扱ったものが多く,その他の領域(ex.運動)における認知的方略の研究はほとんど見られない。そこで,アスリートを対象にし,非アスリートとの比較によって,失敗後のDP者ならびにSO者の特徴を明らかにした。その結果,防衛的悲観主義者と方略的楽観主義者とでは,失敗後の感情やコーピングが異なるが,その影響はアスリートと非アスリートでは異なることが示された。
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