2009 Fiscal Year Annual Research Report
金融再建の政策過程--韓国、タイ、メキシコの比較研究
Project/Area Number |
20830015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡部 恭宜 The University of Tokyo, 社会科学研究所, 助教 (00511445)
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Keywords | 政治学 / 経済政策 / 制度論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、韓国、タイ、メキシコが1990年代の金融危機後に取り組んだ金融再建について、ミクロの政策過程を比較分析するものであり、各国の政策決定者の政策選好、選択肢、認識を分析し、従来の金融システムから受けた歴史的、制度的な制約を明らかにしようとしている。 平成21年度は、各国の資料収集や関係者への聞き取り・意見交換を行うため、昨年度のタイに引き続き、メキシコおよび韓国でそれぞれ約3週間の調査を行った。メキシコでは、財務省、中央銀行、銀行証券委員会の(元)幹部職員、大学教員、日本大使館関係者10名に、韓国では、企画財務部、金融委員会、中央銀行、邦銀の現地支店の幹部職員、大学教員、日本大使館関係者14名に、それぞれ聞き取りを実施した。さらに両国では大学、研究所、政府機関で資料収集を行った。 以上の現地調査により、韓国、メキシコの金融再建の政治過程について、本邦では得られない情報を得ることができた。分析の結果、韓国では危機直後の財務部と中央銀行の間の政策上の相違が、メキシコでは国有化された銀行の再民営化の再編の中で外国銀行の役割が求められたこと等が明らかになった。また、金融改革の一環として、韓国では中央録行の独立性が法制化されたが、その一方で中央銀行の銀行監督権限が奪われ、同行の金融政策策定や業務遂行に支障をきたしていること、さらに、独立性の程度は必ずしも充分ではなく、現在の金融政策の方針の違いを巡って政府から圧力がかけられる事態が生じてきたことも、調査で明らかになった。
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