2009 Fiscal Year Annual Research Report
ラオス少数民族間の教育普及格差・不平等が貧困をもたらす要因の社会経済学的分析
Project/Area Number |
20830023
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
瀧田 修一 Ochanomizu University, 人間発達教育研究センター, 特任リサーチフェロー (00510033)
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Keywords | 教育開発 / 教育経済学 / ラオス / 国際協力 |
Research Abstract |
最貧国の1つであるラオス人民民主共和国(以下ラオス)において、特にその最貧困郡では、少数民族における教育アクセスへの不平等、教育普及、特に基礎教育普及格差が、その地域における貧困問題へと繋がる、「貧困の悪循環」を形成していることが想定される。そのような背景を鑑み、本研究の目的は、ラオスの多様なエスニシティの関係と国民統合の関係、国民統合の達成過程で生じる葛藤とその課題の解決における教育の役割を常に念頭におきつつ、第1にそのような多様な民族・言語・宗教・文化を反映したラオス教育の実情を明らかにする事、第2にラオスの基礎教育分野においてエスニックグループ間にどのような教育格差が生じているのかその実態、またどのような要因がその格差をもたらしているか、現地調査により実証的に明らかにする事、第3に、それらの教育普及格差・不平等が同地においてどのような貧困(経済的貧困と人間開発的貧困)をもたらしているのか、そして第4にその道程と要因を実証分析から明らかにすることである。 平成21年度の研究では、ラオス国内少数民族における教育普及格差と貧困(所得貧困に加え人間開発的貧困)とのは相関関係が強く、特に所得貧困と中等教育、人間開発的貧困と初等教育の因果関係が見られた。また都市部では所得格差と中・高等教育普及格差の相関が初等教育以上に強く見られたが、これが僻地へと移動すると初等・前期中等教育普及格差との相関の方が強く表れた。これと関連し、過半数を占めるラオ族以外は、民族間の教育普及格差は居住地域の格差との関連性が強いということが分かった。以上より、ラオス国内の教育普及と貧困削減に対する国際協力としては、僻地居住少数民族への初等・前期中等教育の完全普及、都市部では後期中等・高等教育への機会拡大支援が望まれる。
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