2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20830028
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
西岡 晋 Kanazawa University, 法学系, 准教授 (20506919)
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Keywords | 政治学 / 政策過程 / 福祉国家 / 児童福祉政策 / 言説分析 |
Research Abstract |
本研究は、周辺的政策制度の持続メカニズムを日本の児童福祉政策を事例として、政策過程論の視座から解明することを目的としている。 平成21年度は研究計画に従い、まず1990年代の転換期における児童手当の政策過程を解明した。厚生官僚は1980年代に「先送り」によって児童手当制度の延命に成功した後、90年代には「1.57ショック」を契機に、社会民主主義的言説と保守主義的言説の接合を通じて、「少子化対策」として児童手当制度をリフレーミングすることにより「制度転用」を行い、その後の制度発展の基盤を築いた。 つぎに、2000年代拡大期における児童手当の政策過程を解明した。この時期の制度拡充は児童手当政策に熱心な公明党の政権参加によるところが大きかったが、費用負担を企業拠出金ではなく租税に求めることで、経済界から批判を回避することに成功したという点も重要である。一方、06年には地方分権改革によって国庫負担金が削減され、その分地方負担が増した。財政危機下での制度拡充を理解するには費用負担変化の解明が重要であることを示している。 本年度には、研究成果として、2009年度日本行政学会報告「日本型保守主義レジームにおける脱家族化政策の形成と官僚制」(2009年5月10日)、論文「比較福祉国家研究のなかの政治学:社会学との隔絶と接近の位相」『金沢法学』52巻1号、2009年、35-84頁、を公表・公刊した。 民主党への政権交代に伴って、2010年度からは新しく「子ども手当」が創設された。児童手当制度は発足当初から廃止論が唱えられ、常に縮小や廃止の危機にあったことを考えれば、所管官庁が逆風のなかをいかにして制度を存続・発展させ、子ども手当までつないできたのか、その成功条件を探った本研究は理論的にも社会的にも意義が大きいといえるだろう。
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