2008 Fiscal Year Annual Research Report
軍備管理法に基づく国内実施義務の履行強化:国際監視制度を通じた国家の裁量権の制約
Project/Area Number |
20830038
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阿部 達也 Kyoto University, 法学研究科, 助教 (80511972)
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Keywords | 国際法 / 軍備管理 / 国内実施 / 国際監視制度 / 国家の裁量権 |
Research Abstract |
本研究の目的は、軍備管理法に基づく国内実施義務の履行強化に関して、国内実施義務の設定時にはその履行に対して国家に広い範囲で認められていた裁量権が、その後の国際監視機関の実行を通じて制約を受けているという状況を実証的に明らかにすることにある。 このため、本年度は準備期と位置づけて、考察のために必要となる文献および資料の特定と収集ならびに実際に国内実施義務の履行および履行監視の任務にあたっている政府関係者・国際監視機関担当者との意見交換を行い、これらを踏まえて予備的な分析を試みた。 ◆1972年生物兵器禁止条約 2007年12月の締約国会合に提出された文書を入手し分析を行った。新たに設置された機関(実施支援ユニット)が活動を開始したばかりであり、今後の動向に注目する必要がある。 ◆1993年化学兵器禁止条約 国際監視機関による監視活動が最も充実を遂げている法的枠組である。とくにアジア地域およびアフリカ地域における国内法の整備状況について資料を収集し分析を行った。各国の国内実施義務の履行状況には一定の着実な改善が見られている。 ◆2004年安保理決議1540 2008年7月8日付で1540委員会が作成した「決議1540の実施状況に関する報告書」を入手した。提出の遅れている「包括報告書」と合わせてこれを分析する必要がある。 以上の作業の結果として、考察の対象となっている3つの法的枠組みによる国内実施義務の履行強化に向けた取り組みの現状が明らかとなった。もっとも、国際監視機関による監視活動を通じて国家に認められていた裁量権が制約を受けているとの結論を導くためにはより焦点を絞ったさらなる分析が必要であり、このために引き続き関連する文献および資料を収集すること、ならびに政府関係者・国際監視機関担当者に対する聞き取り調査を行うことの有用性が認識された。
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