2009 Fiscal Year Annual Research Report
軍備管理法に基づく国内実施義務の履行強化:国際監視制度を通じた国家の裁量権の制約
Project/Area Number |
20830038
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阿部 達也 Kyoto University, 法学研究科, 助教 (80511972)
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Keywords | 国際法学 / 軍備管理法 / 国内実施 / 国際監視制度 / 国家の裁量権 / 不拡散 / 化学兵器 / 説明責任 |
Research Abstract |
本研究では、軍備管理法に基づく国内実施義務の履行に関して、義務の設定時には国家に広い範囲で認められていた裁量権がその後の国際監視機関の実行を通じて制約を受けているという状況を契機として、国内実施義務の履行を強化する現実の取り組みにあたってどのような要素が必要であるかを考察した。 考察の結果として、軍備管理法に基づく国内実施義務は各法的枠組において設定された国際監視制度を通じてその履行の強化が図られていること、そしてこのような国際監視制度を通じた義務の履行過程の内実はそれぞれに説明責任の課された国家と国際監視機関との間の協働であって、国家の裁量権を狭めつつ国際監視機関が客観的かつ実効的に監視を行うという方法に依拠していることが示された。また、国内実施義務がより完全かつ実効的に履行されるためには、義務内容の明確化、監視活動の透明性向上、より効果的な支援の提供、国内実施過程への市民の関与などが課題となることが明らかとなった。 以上に得られた成果の意義は、一つには義務の履行強化の取り組みが応用可能性を持つことである。本稿において展開された議論は、大量破壊兵器の他のカテゴリーについてはもちろんのこと、地球環境保護や国際テロリズムの防止処罰などのように、多数国間枠組みの実行を通じて制度化されるに至っている国際法の他の分野についても一定の示唆を与えうる。いま一つの意義は国際法の発展に対する視座を提供することにある。かつて40年以上前にフリードマンは国家間の「協力の国際法」という概念を用いて国際法の性格を示そうとした。今日において「協力の国際法」は国家と国際機関との間の「協働の国際法」としてさらなる発展を遂げていると見るべきであろう。そして、出現しつつあるこの概念は、市民がこの協働プロセスに積極的に参加することによってさらに強化されることになるであろう。
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