2008 Fiscal Year Annual Research Report
中国国民政府の日本政治分析と日中戦争-1928〜1937年-
Project/Area Number |
20830039
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 靖夫 Kyoto University, 法学研究科, 助教 (50512258)
|
Keywords | 中国 / 国民政府 / 日本陸軍 / 日本政治史 / 日中関係史 / 国際関係史 / 日中戦争 |
Research Abstract |
本研究は、中国国民政府が1920年代から30年代にかけて日本の政治や外交をどのように分析し、その結果としてなぜ日中戦争を決意するに至ったのかを、日中両国の一次史料を駆使して検討するものである。本研究は、当該期の中国がどの程度正確に日本の政治状況を把握し、対中政策に反映させたかという斬新かつ重要な視角を設定している点で独創的である。というのも、こうした視角は日中戦争の原因を解明する上で必要であるにもかかわらず、日本政治史と中国近代史にまたがる研究領域であるため、これまで双方の研究動向を踏まえた精力的な研究がなされてこなかったのである。そこで、日本政治史を専門とする研究代表者はそうした課題を克服すべく、平成20年度において日中台の基本的な公刊史料を徹底的に収集した上で、平成21年3月11〜14日に台湾へ渡り国民政府に関する膨大な一次史料(「蒋中正総統文物档案(大渓档案)」など)を所蔵する国史館を中心に史料収集を行い、中国でも特に駐日外交官や軍人の日本政治分析の検討を行った。その結果、(1)彼らが、日本の政治上層部は日中親善を図る穏健派(軍部を含む)であると認識し、その穏健派を通じて日中関係の改善を模索していたこと、(2)陸軍の統制が悪化した1937年初頭には、中国が日本の穏健派に失望し、戦争決意を一層強めたこと、等が明らかとなった。研究代表者はこれらの研究成果をこれまでの研究成果と併せて、平成21年3月末に研究書『日本陸軍と日中戦争への道』にまとめた(平成21年9月刊行予定)。来年度は、北伐から満州事変までの時期にも分析対象を広げ、更に日中戦争後の見通しを踏まえ、学術雑誌や学界などで体系的な研究成果を公開、報告していくことにしたい。
|