2009 Fiscal Year Annual Research Report
中国国民政府の日本政治分析と日中戦争―1928~1937年―
Project/Area Number |
20830039
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 靖夫 Kyoto University, 法学研究科, 助教 (50512258)
|
Keywords | 中国 / 国民政府 / 日本陸軍 / 日本政治史 / 日中関係史 / 国際関係史 / 日中戦争 |
Research Abstract |
本研究は、中国国民政府が1920年代から30年代にかけて日本の政治や外交をどのように分析し、その結果としてなぜ日中戦争を決意するに至ったのかを、日中両国の一次史料を駆使して検討するものである。本研究は、当該期の中国がどの程度正確に日本の政治状況を把握し、対中政策に反映させたかというこれまでにない重要な視角を設定している点で独創的である。 そこで研究代表者は平成20年度に引き続き、日中台の基本的な公刊史料を徹底的に収集した上で、とりわけ中国駐日公使館の外交官や駐在武官たちの日本分析に焦点をあてて研究を行った。その成果は、第1に研究書『日本陸軍と日中戦争への道』を2010年1月にミネルヴァ書房から出版したことである。日本政治史研究でありながら、中国側の新史料までをも駆使し、日中戦争に至る過程における日中の相互誤解という側面を明らかにした本書の反響は予想以上に大きかった。出版後は、1、KSS研究会(H22.2/20、東京大学)、2、憲法史研究会(H22.3/6、京都大学)の2つの学会に、コメンテーター(1)や報告者(2)として招かれた。とりわけ、中国史研究者の学会であるKSS研究会において、中国史研究者との討論を行うことができたのは大きな収穫であった。 第2に、平成22年3月21~25日に台湾へ渡り、駐日公使館に関する膨大な未公刊史料(「外交部档案」など)を収集した結果、国民政府は北伐完了後(1928年~)の混乱期にあって、公使館全体が外交手段として十分に機能していなかったことが明らかとなった。そして1931年の満州事変以降も駐在武官同士の内部対立などにより、正確な日本政治分析が本国へ送られていなかったことも明らかとなった。これらの事実は、中国の日本不信を過剰に増大させ、日中全面戦争の一つの遠因となったものとして重要な意義を持っているといえる。
|