2008 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の文化的文脈に則したシティズンシップ教育カリキュラム開発のための基礎的研究
Project/Area Number |
20830055
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
田中 伸 Hyogo University of Teacher Education, 学校教育研究科, 研究員 (70508465)
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Keywords | 社会科教育 / 市民性教育 / シティズンシップ / 文化心理学 / カルチュラル・スタディーズ / 社会認識 / 文化認識 / イギリス |
Research Abstract |
本年度は、主に3点を明らかにした。第1は分析フレームワークの設定である。先攻研究を検討した結果、シティズンシップ教育は、各国固有の学校制度や法、またカリキュラムや教科書といった顕在的要因と、子どもの意識や、慣習、推論のバイアス、自己のアイデンティティー形成や集団への帰属意識のなど、可視化されない文化的要因(潜在的要因)の2つにより成立していることを明らかにした。そこで本研究では、「文化心理学の研究成果を市民性意識調査研究へ応用し、調査研究を基盤に帰納的に授業構成の違いを分析する」というフレームワークを設定した。 第2は日英におけるシティズンシップの意味内容の違いを明らかにした。日本にて300名強ヘアンケート調査を実施した結果、市民性の要件として儒教的道徳、子どもの判断基準として道徳心が第1におかれていることが明らかになった。ここから、日本は人々の行動基準として「政治的市民」よりも、儒教的観点や道徳心などの要因で価値判断・意思決定を行う場合が多い。すなわち、「政治的市民」としての感覚が子ども達に伝播しているイギリスと、あくまでも道徳的な価値判断を行う日本では、依って立つ市民性の意味内容が異なっていることを明らかにした。 第3は日英のシティズンシップ教育にみられる授業構成の違いである。民主主義という同じテーマの授業を分析した結果、英国は政治的市民育成へ向けた実態的活動に基づく授業構成、日本は論理的思考育成へ向けた分析的活動に基づく授業構成を採っていることを明らかにした。政治的市民育成を目指すイギリスの場合、社会での活動を学校の中に再現し、実際に議論・活動する必要がある。対して、子ども達の判断基準が儒教的道徳などの非論理的観点に操作されている日本の場合、教育にて子どもの思考を分析的思考へと修正・改善・発展させてゆく必要がある。このような違いを明らかにした。
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