2009 Fiscal Year Annual Research Report
わが国の文化的文脈に則したシティズンシップ教育カリキュラム開発のための基礎的研究
Project/Area Number |
20830055
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
田中 伸 Hyogo University of Teacher Education, 学校教育研究科, 研究員 (70508465)
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Keywords | 社会科教育 / 市民性教育 / シティズンシップ / 文化心理学 / カルチュラル・スタディーズ / 研究方法 / アメリカ / イギリス |
Research Abstract |
本年度は主に3点を明らかにした。第1は、前年度に設定した分析フレームワーク、並びに調査内容を再検討し、アンケートの修正・改善・再調査並びにその分析を行った。「文化心理学の研究成果を市民性意識調査研究へ応用し、調査研究を基盤に帰納的に授業構成の違いを分析する」というフレームワークの下、さらに800名強を対象とした調査を実施した。その結果、儒教的道徳を基盤とした子どもの判断基準の段階制を明らかにした。また、同時にその判断基準は、通常批判対象外として扱われていることが明らかになった。英国の先行研究と比較した上で、このことが日本固有の特徴であることを以下の論文で論証した。Noboru Tanaka, Research about the nature of citizenship in Japan, "Human Rights and Citizenship Education", Children's Identity and Citizenship in Europe, pp. 2009. 第2は、具体的事例を通して、シティズンシップの教育実践と文化的文脈の関係を分析した。はじめに実践分析として、政治学習の領域(投票)を事例を検討した。その結果、英国と日本の教育実践の違いとして、実体的活動を取り込む英国に対し、分析的活動を基本とする日本という、授業構成論の違いを明らかにした。次に、教育実践とその社会環境の相互作用を、部落差別を通して分析し、教育と通した価値観の形成過程,並びにその反省方略を明らかにした。それらの研究成果を以下の国際学会で発表した。Noboru Tanaka, Civil Rights in Japan : A Closer Look at the Buraku, National Council for the Social Studies, Annual Conference in Atlanta, 2009. 第3は、研究方法論の検討を行った。本研究の課題であった理論研究・実践研究の往還の方略として、社会科教育学をデザイン科学と捉える枠組みを提案した。学習環境をキーワードに構築主義的な研究方法を採用することで教科教育学内(社会科教育学内)に留まらず、同一の事象に対する学際的研究が可能であることを、以下の論文で論証した。田中伸「デザイン科学としての社会科教育学-教科教育において学際的協働はいかにして可能となるのかー」『教育学研究紀要』中国四国教育学会、第55巻、pp.702-707、2010。
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