2009 Fiscal Year Annual Research Report
動学的パネルデータモデルにおける操作変数推定量の改善
Project/Area Number |
20830056
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
早川 和彦 Hiroshima University, 大学院・社会科学研究科, 講師 (00508161)
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Keywords | 計量経済学 / パネルデータ |
Research Abstract |
本年度は動学的バネルモデル、特に自己回帰パネルモデルにおけるラグ次数の選択問題について考察した。時系列モデルにおけるラグ次数の選択問題は非常に多くの研究が行われているが、動学的パネルモデルにおいては、重要なテーマであるにもかかわらず、ほとんど研究が行われていなかった。そこで、実証分析でもよく用いられる一般化モーメント推定量に基づいたラグ次数の選択方法を提案し、シミュレーションでパフォーマンスの比較を行った。具体的には過剰識別制約検定を逐次的に行う方法、有意性検定を逐次的に行う方法、統計学の分野で提案されたLASSOと呼ばれる変数選択手法を用いる方法を比較した。シミュレーション結果からは有意性検定に基づいた方法が比較的良いパフォーマンスを持つことが分かった。また、LASSOに基づいた方法は、補助パラメータの選択の仕方によってパフォーマンスが著しく異なること、過剰識別制約検定に基づく方法は他の2つの方法よりもパフォーマンスが劣ることが分かった。この結果は、最も容易に実行できる有意性検定を逐次的に行うことで、正しいラグ次数を比較的高確率で選ぶことができるということを意味しており、実証分析において重要な含意を持っている。 なお、ラグ次数の選択問題は現在進行中の研究テーマであるパネル単位根検定においても重要になることがわかっている。したがって、提案した選択手法の実用性をより高めるためには、パネル自己回帰モデルを、より一般的なパネル自己回帰移動平均モデルに拡張し、自己回帰部分と移動平均部分のラグ次数の選択問題を考察しなければならない。
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