2008 Fiscal Year Annual Research Report
発達障害児における自己理解の発達プロセスの解明と臨床的援助に関する研究
Project/Area Number |
20830064
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
菊池 哲平 Kumamoto University, 教育学部, 准教授 (70515460)
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Keywords | 自閉症 / 発達障害 / 自己理解 / 臨床的援助 |
Research Abstract |
本年度は、自閉症児の情動に対する志向性を検討するため、与えられた文脈情報から情動に着目するか情動以外の情報に着目するかを検討した。その結果、自閉症児は文脈情報から情動をあまり読み取らず、自己情動と他者情動のどちらでほとんど違いがないことが示された。また、自閉症幼児の認知特性を検討するため、色と形という2つの視覚的刺激の成立要件に着目し、自閉症幼児はどちらの要件を優先するかを実験的手法で検討した。見本刺激に対し形が同じ刺激と色が同じ刺激を同時に呈示し、「同じだと思う」刺激を選択してもらった。結果、自閉症幼児は色による認知判断を優先し、形要件の中枢性統合の困難が示唆された。したがって、自閉症幼児の認知的特徴として刺激に含まれる要因の一つにとらわれること旨があり、同時に複数の刺激要因に対して注意を配分していくことが難しいことが示唆された。また事例研究として、自閉症児への動作法適用場面を分析することで効果的な療育の方法について検討を行った。その結果、自閉症児への関わり方として援助者が援助者自身への注意を促す方向から動作課題へ注意を促す方向への切り替えがポイントとなり、経験豊かな援助者ほど2つの注意の方向についてバランスよく促していることが分かった。また援助者の働きかけとして経験豊富な援助者ほど対象児に対する賞賛的働きかけを多く行っていることが分かった。したがって自閉症児への療育場面において課題への注意の向け方を適切に配分していくこと、また賞賛を多く行うことが重要であると示唆された。
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