2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20830071
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
佐々木 隆文 Nagoya City University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (10453078)
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Keywords | 内部資本市場 / エージェンシー問題 / コーポレート・ガバナンス / 経営者報酬 |
Research Abstract |
本研究では,わが国企業を対象に,コーポレート・ガバナンスと内部資本市場との関係について研究している.平成21年度はコーポレート・ガバナンスの中核的要素である経営者報酬が他のコーポレート・ガバナンス・システムとどのような補完性を持つかについて研究すると共に,資本構成などのガバナンス変数が内部資本市場の効率性にどのような影響を及ぼしているかを検証した.まず前者については,2000年代の日本企業を対象とした実証分析の結果,外部ガバナンス・システム,内部ガバナンス・システムの有効性と経営者報酬は正の相関を持つが,そのような高い経営者報酬は事後的なパフォーマンスと正の相関を持つことが示唆された.この結果は,ガバナンス・システムによつて規律づけられた経営者報酬が企業パフォーマンスにとって重要であることを示唆している.他方,ガバナンスと内部資本市場の関係については,2000年代のプールデータを対象に業種ダミー,年次ダミーを導入した分析では高いレバレッジが内部資本市場の効率性(内部資金配分と投資機会との共分散で計測)に負の影響を及ぼしていることが示唆された、その一方,固定効果を考慮した計測では統計的に有意な傾向が得られなかった.この結果は,資本構成,内部資本市場の効率性ともに企業固有の要因による影響を受けていることを示唆するが,ガバナンスに関する変数は時系列的な変動が小さく固定効果モデルによる推計に適さないという先行研究の議論とも符合する.本研究ではこのような推計上の問題に留意しつつ,先行研究で議論されることが少なかった負債のコスト(内部資本市場の効率性への悪影響)を指摘し,負債のコスト・ベネフィットは投資水準への影響のみでなく,投資の構成も考慮して論じるべきであることを主張している.
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