2008 Fiscal Year Annual Research Report
債権者側の事情により債務者が履行障害に陥った場合における債権者の責任に関する研究
Project/Area Number |
20830072
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
坂口 甲 Kobe City University of Foreign Studies, 外国語学部, 講師 (20508402)
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Keywords | 債権者遅滞 / 受領遅滞 / 債務不履行 / ドイツ債務法 / 国連物品売買条約 / 債権者の協力義務 |
Research Abstract |
1.研究内容の具体化。2008年度は、契約における履行障害が、両当事者によって惹起された場合の法的効果について、ドイツ法および国連物品売買条約(以下、後者をCISCとよぶ。)を素材として研究を行った。 2.研究成果の概要。両当事者に起因する債務不履行の効果については、単純に、各当事者の原因への寄与割合に応じて、効果を分割すればよいと考えがちである。たとえば、寄与割合が1:1であれば、債権者の債務者に対する損害賠償請求権も2分の1に縮減するというのがそれである。しかし、ドイツ法およびCISGの検討から、事態はそれほど単純でないことが明らかとなった。その主たる理由は、2点ある。第1に、上記のような純粋な数学的処理では、給付と反対給付との主観的等価性が維持されないおそれがある。つまり、割合的処理には規範的な考慮が不可欠である。第2に、解除のように割合的処理が困難な効果が存在する。そして、この点については、CISGをめぐる法解釈論から、その困難を克服するための一定の試みを読み取ることができる。 3.研究成果の意義・重要性。本研究の対象は、わが国の債務不履行法でこれまで議論されてこなかったテーマであること、それにもかかわらず、両当事者に起因する履行障害が現実には少なくないことを考え合わせると、本研究の成果がわが国の債務不履行法に新たな議論の場を提供し、その議論を活発化する端緒となることが期待される。もちろん、本研究の成果は、実務に生起する問題への数少ない解決の試みとしても、重要な意義を有する。
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