2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20830092
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大江 一平 Tokai University, 総合教育センター, 講師 (20509624)
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Keywords | 発展的憲法理論 / 憲法変遷 / 生ける憲法 / 憲法解釈 / 司法審査 / 民主主義 / 二元的民主政理論 / 正規の憲法改正条項によらざる憲法改正 |
Research Abstract |
アメリカ立憲主義における「正規の憲法改正条項によらざる憲法改正」の位置付けについて重要な指摘を行っているチュレーン大学のS・グリフィン教授の議論を中心に検討を行った。グリフィン教授は、従来のアメリカにおける憲法理論が過度に裁判所中心主義的であるがゆえに「正規の憲法改正条項によらざる憲法改正」に十分に対応できなかったことを批判し、「正規の憲法改正条項によらざる憲法改正」を説明・記述・正当化する「発展的憲法理論」の必要性を説く。研究者は、グリフィン教授の議論が、アメリカ憲法史の説明・記述としては説得的であり、判例のみならず、連邦議会や大統領の動向、憲法改正手続等を視野に入れて全憲法秩序を理解しようとする点で、憲法の変動を考察する際に有用な視点を提供するものであることを明らかにした(11の〔学会発表〕欄を参照)。しかし、グリフィン教授は、憲法解釈に際して一つの解釈手法に拘泥しない多元論の必要性を強調するが、異なる解釈手法をどのように使い分けるのかが不明確なこと、また、グリフィン教授の議論は、あくまでも「正規の憲法改正条項によらざる憲法改正」の説明・記述・正当化に重点が置かれているので、その点では、「正規の憲法改正によらざる憲法改正」の法的な成立要件を積極的に提示しようとするB・アッカーマン教授の二元的民主政理論とは方向性が異なることも併せて指摘した。 なお、研究者はこれまで、アッカーマン教授の二元的民主政理論に関する研究を行ってきたが、最近のアメリカ合衆国における憲法の変動をめぐる議論との関連で、二元的民主政理論の意義が「正規の憲法改正条項によらざる憲法改正」という道具立てによって連邦最高裁のリベラルな諸判決の正当化を図り、多様なあり方を持つ憲法制定権力たる人民の創造性を憲法に反映させていこうとする点にあることを改めて指摘した(11の〔図書業績〕欄を参照)。
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Research Products
(2 results)