2009 Fiscal Year Annual Research Report
医薬品産業におけるイノベーションの初期プロセスの解明
Project/Area Number |
20830094
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
石原 正彦 Tokyo University of Science, 総合科学技術経営研究科, 助教 (60510047)
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Keywords | イノベーション / 中核技術 / 技術経営 / MOT / バイオテクノロジー / 医薬品開発 / 市場規模予測 / コア技術 |
Research Abstract |
<1>昨年度より取り組む"新薬候補の市場規模予測がしばしば大きく外れる"原因の追究を深掘りするため、該当する事例の数を増やして調査・分析を実施した。分析の結果、事例に共通した原因として1)新薬の市場規模予測が新薬の特性に対する配慮がないまま既存薬の市場規模等を精緻分析して算出されること、2)新薬開発に伴う不確実性のマネージメントを新薬の特性に則さぬ形で実施することがあり、そしてその背後に、1)開発現場における論理、2)新薬候補自身及び市場環境に関する情報量とヒトの知識レベルとの乖離が存在する可能性を仮説的に導き出した。新薬の市場規模予測は医薬業界の製品イノベーションを興す上で重要なプロセスであり、本研究成果は新薬開発の際に的確な市場規模予測する上で留意すべき新しい視点を提供するものと考えられる。 <2>医薬・バイオテクノロジー企業のイノベーション・プロセスに関与する中核技術のマネージメントについて理解を深めるため、競争優位な製品開発に数多く成功した"林原生物化学研究所"の事例分析を行った。その結果、林原の成功は、経営資源を配分する立場の"リーダー"が"意外に身近なところ"から"自社の競争優位な技術を出発点にして"自社の中核技術を明確に認識したことが大きく貢献していること、そして"自社の競争優位な技術を出発点とした"中核技術の認識プロセスには"蓄積"、"選択"、"確認"の少なくとも3つのステップがあることを示した。また、多くの製造業において中核技術が見つけ出されにくい原因を考察し、"中核技術自身の特性"と"中核技術の認識プロセスそのもののむつかしさ"の大きく2つの原因を仮説的に導き出した。本研究成果は医薬・バイオテクノロジー企業を含む製造業の中核技術の認識の重要性とむつかしさについて指摘するもので、製品開発現場における技術マネージメントに新しい視座を提供するものと考えられる。
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[Journal Article]2009
Author(s)
伊丹敬之・東京理科大学MOT研究会
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Journal Title
日本の技術経営に異議あり(石原正彦・第五章「中核技術の認識の重要性とむつかしさ」担当)(日本経済新聞出版社)
Pages: 156-185
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