2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20830103
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷本 陽一 Waseda University, 法学学術院, 助手 (50515252)
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Keywords | 履行期前の履行拒絶 / 契約危殆責任 / 債務不履行 / 担保供与請求権 / 適切な保証を求める権利 / 再交渉義務 / 損害軽減義務 / 解除 |
Research Abstract |
契約危殆という問題の構造を知り、有効な救済方法を獲得するためには、一方で、従来、この問題が民法体系上どこに割り当てられてきたか、他方で、他国の法制度が同様の問題にどう対応してきたかを知ることが不可欠である。この観点から、2008年度の研究を大別すると、(1)日本における契約危殆に対する法的救済の歴史的展開の調査と分析、(2)ドイツにおける契約危殆に対する法的救済の歴史の調査と分析の二つとなる。 (1)については、履行期前の履行拒絶を取り上げ、旧民法起草過程から現在に至るまでの展開を追跡し、議論の契機が明治末期に生じ、本格的な議論の出発点が大正後期から昭和初期にあることを確認した。この過程において、旧民法財産編383条1項前段の履行拒絶が履行期後のそれであることが確定された(これついては、下記備考を参照。)。更に、現在に至るまでの履行拒絶論の展開を調査し、かつての履行拒絶論と現在の履行拒絶論との比較分析を行った。 これらの調査と分析にあたっては、学説の理論的な系譜関係及び勢力関係の論証だけでなく、当時の学者層の研究環境、主要な書籍の発行部数、戦災天災等、人的・物的な事柄が学説の展開(特に、勢力関係)に及ぼした影響の論証をも試みた。これについては、一定の成果が得られたが、資料の不十分、統計批判などの課題も残っており、今後の研究継続により解決を図りたい。 (2)関連するドイツ法の文献の収集と調査を行った。ドイツにおける履行期前の履行拒絶の取り扱いの史的展開を追跡した。今後は、不安の抗弁や解除等の関連する救済手段にも調査の範囲を広げ、ドイツにおける契約危殆に対する法的救済の全体像を分析する。 なお、これらの成果については、2009年度以降、総合と再分析を行い、適宜公表する予定である。
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