2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20830103
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷本 陽一 Waseda University, 法学学術院, 助手 (50515252)
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Keywords | 履行期前の履行拒絶 / 契約危殆責任 / 債務不履行 / 担保供与請求権 / 適切な保証を求める権利 / 再交渉義務 / 損害軽減義務 / 解除 |
Research Abstract |
本研究の目的は、契約がとりわけ履行期前にその実現を不安視される状態、すなわち契約危殆状態の法的構造とそれに対する法的救済のあり方を探究することにあり、その目的遂行のために、諸外国、とりわけアメリカとドイツの法的救済とその形成過程を追跡するとともに、日本における契約危殆の紛争実態を探る作業が行われた。 前年度から引き続き行った研究のほか、本年度の研究成果として以下のものが挙げられる。 (1)契約の拘束力を限界づける法的救済の実相の比較考察である。ドイツ法(BGB321)、アメリカ法(UCC2-609)のいずれもが、その法的救済の異同にもかかわらず、(1)契約危殆に陥った契約の解消の可否の判断プロセスにおいて、正常な契約への復帰に向けられた交渉の有無、態度に重要な役割を与える点に類似性がみられ、かつ、(2)いずれの法的救済も交渉の機会を保障し、交渉を促進する機能を果たす一面があるという知見が得られた(もっとも、このドイツ法の法的救済とアメリカ法のそれとの間の類似性に対するカール・ルウェリン、エルンスト・ラーベル等の寄与は確認できていない)。 (2)契約危殆時における規範選択の方法論的考察である。アメリカ法における関係的契約論の展開過程において登場した契約維持的規範と契約切断的規範に着想を得て、(1)契約危殆時における紛争解決指針として関係維持的指針と関係切断的指針を想定する必要性、可能性及び有用性を考察し、(2)契約危殆時における規範選択手続のモデル構築の試論を行った。アメリカ法における契約維持的規範と契約切断的規範の位置づけの把握、規範選択手続のモデルの実効性の検証などになお課題が残り、本報告作成時点においては結論を得るに至らなかったため、これについては、今後、更なる研究が必要と考える。
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