2008 Fiscal Year Annual Research Report
デューイ教育理論の根本問題の解明--現代教育のアポリアの解消--
Project/Area Number |
20830107
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
苫野 一徳 Waseda University, 教育・総合科学学術院, 助手 (70507962)
|
Keywords | デューイ / 現象学 / ヘーゲル / 教育的経験 / 成長 / 自由 |
Research Abstract |
本研究の目的は、以下2つのデューイ教育理論の根本問題-そして同時に現代教育学のアポリア-を、デューイ哲学それ自体を再構築することで解明することにあった。その根本問題とは、(1)教育の究極目的を相対化し、教育とは成長の過程、経験の再構成それ自体であるといったデューイが、しかしどのような「成長」を志向した教育を「構想」するのが「よい」かという問いについて、原理的な回答をなし得なかった点。(2)興味・関心・経験から始めよという経験主義的教育方法を提示したデューイが、しかし、いかに興味が大切であるとは言っても、実社会で生きるには、興味・関心に関係なく学ぶべき知識がある、という批判に対して、有効な解答を明示することができなかった点。以上2点である。 本年度において、報告者は主として(1)の課題に取り組み、教育的「経験」=「成長」とは何か、その本質を解明する論文を発表した。その際、「研究計画」で述べたように、まずはデューイ経験哲学それ自体の不徹底を現象学的に再構築し、その上で、若きデューイが傾倒しその後離反した-しかし社会哲学の文脈においては実はデューイを凌駕する原理を提示していた-ヘーゲルの洞察を、「教育的成長」原理に組み込んだ。その要諦は以下の通りである。すなわち、「公教育」を「構想」するという観点からすれば、教育的経験=成長の原理は、デューイがいったような、不均衡の発展的回復といった単なる「形式的」原理からは導くことができない。われわれはその「内実」を現象学的に根本仮説として問う必要があるが、その最も力強い根本仮説は、ヘーゲルの洞察に見出しうるしそれは広範な共通了解可能な形で論証することもできる。その根本仮説=成長原理とは、「自由の相互承認」を本質とする近現代社会においては、教育的成長とは各人の「自由」を実質化していく過程である、ということになる。
|