2009 Fiscal Year Annual Research Report
デューイ教育理論の根本問題の解明――現代教育のアポリアの解消――
Project/Area Number |
20830107
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
苫野 一徳 Waseda University, 教育・総合科学学術院, 助手 (70507962)
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Keywords | デューイ / 現象学 / ヘーゲル / 教育的経験 / 成長 / 自由 |
Research Abstract |
本研究最大の目的は、教育の究極目的を相対化し、教育の目的は「成長」それ自体にあるとしたデューイが、しかしでは教育はどのような「成長」を具体的に志向すべきか、その指針を明らかにする「方法」を明示できなかったことを論証するとともに、この「方法」を現象学的に構築することで、教育的経験=「成長」の指針原理を、デューイ教育思想を鍛え直す形で明示することにあった。 前年度において、デューイ経験哲学の問題点を明らかにし、これを現象学的に克服できることを明らかにした。ひと言でいうと、価値問題を論ずる際のデューイ経験哲学の「方法」は、一切の価値はその都度の経験・状況において決まる、と、言明するところにある。これはきわめて妥当な君明ではあるが、しかしこの方法だけでは、その都度の経験がどのような「意味」において「よい」といいうるか、明らかにすることができない。この弱点を、筆者は現象学的「本質学」の方法によって克服することができることを明らかにした。もっともここで「本質」といっても、これはある「絶対的」な価値を言い当てるものではない。「本質学」とは、最も了解度の高い「意味本質」を、「根本仮説」として問い合う営みである。 そこで本年度では、この「本質学」の方法にのっとり、ここにヘーゲルの洞察を援用することで、教育的経験=「成長」の指針原理を明らかにした。ひと言で概念化すると、「各人の<自由>および社会における<自由の相互承認>の実質化」となる。この原理の原理性を、バーリンやローティらとの比較を通して論証する研究も行った。
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