Research Abstract |
親の養育態度と教師の指導態度をそれぞれ「受容」「統制」「心理的自律性の尊重」からなる威厳ある養育・指導態度という視点からとらえ,それぞれが児童生徒,学生に与える影響と,児童生徒,学生が認知する親の威厳ある養育態度と教師の威厳ある指導態度の関連を検討した。 大学生を対象に,過去の親の威厳ある養育態度,教師の威厳ある指導態度と学習動機づけ,成績という学業的な領域,学校適応感,進路選択効力感という環境適応的な領域,信頼感,という社会的な領域,攻撃性,セルフ・ハンディキャッピングという問題行動領域に関するデータを収集した。 大学生に想起された小学校,中学校,高等学校の教師の威厳ある指導態度と学校適応感,学習動機づけ,現在の信頼感の関連について分析した結果,小学校の頃から受容,統制,心理的自律性の尊重がそろって高い威厳ある指導態度を教師が示すことによって子どもの学校適応感,学習動機づけ,将来の信頼感にポジティブな影響を与える可能性が示された。 さらに,大学生に想起された子どもの頃の親の威厳ある養育態度と親の体罰,子どもの認知している親の養育態度の一貫性,現在の自分のセルフ・ハンディキャッピングの関連を検討した。その結果,性別によるわずかな差異はあるものの,全体的な傾向として親の威厳ある養育態度は子どものセルフ・ハンディキャッピングという不適応的な自己提示を低め,子どもからの親の養育態度の一貫性の認知を高めることが示された。また,体罰の経験は親の養育態度の一貫性の認知とは関連していなかった。ただし男女で体罰という親の養育行動の解釈が大きく異なり,男性は体罰を統制として認知しているが,女性は体罰を受けることで親からの受容と心理的自律性の尊重の認知を低めていた。
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