2009 Fiscal Year Annual Research Report
非配偶者間生殖補助医療で生まれた子どものナラティブ再構築に関する研究
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20830112
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Research Institution | Chubu Gakuin University |
Principal Investigator |
宮嶋 淳 Chubu Gakuin University, 人間福祉学部・人間福祉学科, 准教授 (00454299)
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Keywords | ソーシャルワーク / 権利擁護 / DI者 / ナラティブ / ストレングス / 子の福祉 / AID / ART |
Research Abstract |
本研究は、DI者及びそのグループへのインタビュー調査並びに第三者へのアンケート調査を重層的に実施し、DI者が主張する彼らが被っている人権の侵害から、DI者を解放するための理路を明らかにしていくことをめざした。 本研究で得た結論は、ナラティブ・アプローチとストレングス・アプローチの交互作用を基軸とするソーシャルワークを展開することにより、DI者固有の人権に対する、AIDを取り巻く社会システムから被る人権への侵害行為から、DI者を解放し、DI者の権利を擁護することが可能となるというものである. DI者に対する人権侵害は重層的である.DI者が解放されている状態とはDI者の固有の人権-出自を知る権利、表現の自由(権利)、社会的に認められ参加する権利、「つながり」を確定させる権利、暴力に晒されない権利、コミュニティ開発(共生)権が擁護されている状態である.DI者の物語が外在化しオルターナティブ・ストーリーが構築され、DI者が直面する環境からDI者が自由になることを、「DI者の人権侵害からの解放」であると考えられる. ドミナント・ストーリーは時間と共に強化され、動かしがたいと確信される程度に固定化されることが稀ではなく、ドミナント・ストーリーの形成が[初期・展開期・完結期]のどのレベルに到達しているのかを、ソーシャルワークが見極める機能を果たさなければ、DI者の権利擁護が成り立たない.すなわち、ドミナント・ストーリーを所持している他者を、ソーシャルワークが「レディネス・アセスメント」しつづけていかなければならない.そして、当事者主体のソーシャルワークの展開は、セルフ・ヘルプ・グループが人権の救済を求めた運動の歴史を踏まえ、当事者とソーシャルワークの協働のための、息の長い取り組みが必要となると考えられる.DI者のナラティブの再構築とは、DI者が主張する人権が保持された、オルターナティブ・ストーリーで構築された社会の中で、DI者が生きられることである。 「DI者の人権侵害からの解放」とは、21世紀初頭に生起された新たな人権を求めた運動としての意味をもつ.この人権獲得のための運動が目標に到達するまでソーシャルワークは、DI者のナラティブを聴きつづけ、DI者のストレングスにアプローチしながら、運動の継続を支えていくことが必要になると考えられる.
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Research Products
(3 results)