2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20830117
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
村田 大樹 Doshisha Women's College of Liberal Arts, 現代社会学部, 助教 (10509227)
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Keywords | 不当利得 / 侵害利得 / 割当内容 |
Research Abstract |
不当利得類型論の混迷状況および侵害利得における効果論(とりわけ要件論と効果論の関係性)の不明確さに鑑み、侵害利得成立の要件とされる「権利の割当内容」という概念の解明を試みた。その成果として、「侵害利得論における『割当内容をもつ権利』の判断構造」同志社法学60巻7号611頁を公表し、次のような結論に至った。 類型論発祥の地であるドイツにおいては、類型論の浸透にともない、侵害利得の成否について、侵害された権利ないし法的地位における「割当内容」の有無を基準とする見解が通説となっている。しかし、その「割当内容」の有無を判断する基準が論者により異なることについて、批判が加えられてきた。このような状況に対して、現在、「市場での利用可能性」を基準として判断すべきとする見解が有力に主張されるに至っている。しかし、この見解は、そもそもなぜ権利侵害によって得られた利益が権利者に与えられるのかという「割当内容」の根本問題に答えるものではない。むしろ、客観的価値の賠償という効果を当然の前提としつつ導かれたものであり、確かな根拠をもつとは言い難い面がある。それゆえ、まったく異なる立場から「割当内容」をもつ権利ないし法的地位を捉えようとする見解(不法行為法による保護を受ける権利ないし法的地位と一致させるべきとする見解)も主張されている。このように、ドイツにおいても、侵害利得による保護を受けるべき「割当内容」をもつか否かについては、確固たる根拠を見出せていない状況にある。仮に、有力説の結論を是認するとしても、侵害利得制度の目的等の視点から、更なる正当化を必要とするものと考えられる。 今年度の研究は、侵害利得の要件・効果について直接の提言をするものではないが、今後検討すべき課題を明らかにした点で意義があったものと考える。
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