2009 Fiscal Year Annual Research Report
小学校体育授業における教師の戦略的思考に関する実証的研究
Project/Area Number |
20830118
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
山口 孝治 Bukkyo University, 教育学部, 講師 (50460704)
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Keywords | 教育学 / 教科教育学 / 体育科教育 / 授業研究 |
Research Abstract |
本年度は、優れた教師(恒常的に態度得点の高い4名の教師)による走り幅跳びの単元授業(全9時間)を対象に、実際の体育授業における教授技術の観察・分析を通して、6つの戦略的思考(インセンティブ、スクリーニング、シグナリング、コミットメント、ロック・イン、モニタリング)の発揮の有無、ならびにその背景となる知識の存在について検討することを目的とした。 その結果、経済学の分野で発展してきた「ゲーム理論」にもとづいて策定した6つの教授戦略は、体育科の授業においても観察可能な教授技術として発揮されていることが確かめられた。さらに、その発揮の実態には共通性と異質性があることが認められた。これらの結果から、それぞれの戦略的思考を発揮させる知識の存在が推定された。すなわち、「モニタリング」と「コミットメント」の戦略的思考は、運動の構造的(技術的、機能的、文化的)知識の理解が、「ロック・イン」のそれは、各種運動教材における児童のつまずきの類型の熟知と彼らの運動学習の道筋(学習過程)の理解が、「インセンティブ」と「シグナリング」のそれは、態度的学力観の重視とそれに関する知識の理解が、「スクリーニング」のそれは、児童一人ひとりによって世界の見え方が異なるとする心理学的現象(アフォーダンス理論)の知識の理解が、それぞれ必要不可欠であるものと考えられた。 今後、6つの戦略的思考の発揮に関与すると考えられた知識について、再生刺激法やVTR中断法などを用いてその真偽性、ならびに伝達可能性について明らかにしていく必要がある。
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