2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20830121
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
敦賀 貴之 Kansai University, 経済学部, 准教授 (40511720)
|
Keywords | 価格粘着性 / 一物一価法則 / 情報粘着性 / 実質為替レート / ミクロ価格データ |
Research Abstract |
1.国際間の一物一価乖離における情報の粘着性の役割 価格が頻繁に変更できないだけでなく、企業の保有する情報も頻繁に変更できない国際経済モデルを構築し、モデルが財レベルの実質為替レートのPersistenceとVolatilityをどの程度説明できるのかについて検証。米国・カナダの国際都市間のミクロ価格データを用いた実証分析では、企業の保有する情報の更新が平均的に12カ月程度遅れるケースを想定すると、従来の理論モデルが説明できなかったPersistenceとVolatilityをうまく説明できることを明らかにした。共同研究者との数回の打ち合わせを経て、Journal of International Economics誌から掲載を許可された。 2.国内間の一物一価法則の乖離のVolatilityと価格粘着性の関連性 小売物価統計調査のデータを用い、価格粘着性が一物一価法則からの乖離幅のVolatilityとどのように関連しているのかを理論・実証分析を用いて検証。国内間の一物一価法則からの乖離幅に限定すると、価格粘着性と一物一価法則の乖離幅のVolatilityには負の相関関係があることを発見し、実証分析でもその理論予測があてはまることを明らかにした。いくつかの学会報告を経て、Economic Journal誌から掲載を許可された。 3.国際間の一物一価法則の乖離のVolatilityと価格粘着性の関連性 上述2の研究を国際経済モデルに拡張。モデルでは価格粘着性と財レベルの実質為替レートのVolatilityは必ずしも負の相関関係を持たず、貨幣供給変動と生産性変動とのバランスに応じて価格粘着性とVolatilityの関係が変わることを示した。ヨーロッパの価格データを用いた実証研究では、価格粘着性と財レベルの実質為替レートのVolatilityには、強い負の相関関係があることを明らかにした。この発見の意義は、財レベルの実質為替レート変動においては、金融政策といった実質貨幣供給の変動よりも生産性変動の役割が相対的に高いことを示唆していることである。学会報告を経て、国際雑誌への投稿を検討中。
|