2009 Fiscal Year Annual Research Report
幼児の攻撃行動における認知メカニズムの発達と社会的適応
Project/Area Number |
20830125
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Research Institution | St. Thomas University |
Principal Investigator |
畠山 美穂 Hokkaido University of Education, 教育学部, 准教授 (90510545)
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Keywords | 幼児 / 関係性攻撃 / 社会的情報処理能力 / 外顕的攻撃 / 向社会的行動 / 道徳判断 / 共感性 / 仲間 |
Research Abstract |
【目的】本研究では,攻撃行動に対する適切な対応と予防法を確立する目的で,関係性攻撃と外顕的攻撃にかかわる道徳的判断,社会的情報処理(共感性も含む)などの行動の基盤となる概念理解やその発達プロセスを明らかにすることである。 【方法】調査協力者:幼稚園年長児,年中児,年長児とその担任保育者 仲間関係調査:(1)保育者に対し,担任している幼児の仲間関係について尋ねた(2)保育者に対し,担任している幼児一人ひとりについて,社会的行動(関係性攻撃・外顕的攻撃・向社会性)に関する質問紙調査を行った。 道徳判断・社会的情報処理に関する質問:幼児に対して個別に実験を行った。 観察:幼稚園での自由遊び及び設定保育について,観察を行った。 【結果・考察】関係性攻撃及び外顕的攻撃,向社会的行動には正の相関がみられ,加齢に伴い向社会性・関係性攻撃・外顕的攻撃が増加することが示された。また,幼児は,相手から敵意を持って攻撃された場面で用いられた攻撃よりも,相手の意図が曖昧な場面で用いられた攻撃行動の方が悪いと判断していることが明らかにされた。向社会的行動や関係性攻撃及び外顕的攻撃を多く行う幼児は,これらの行動が少ない幼児よりも,相手から敵意を持って攻撃された場面においても自分が反撃した場合に相手が悲しむだろうと判断していることが明らかにされた。先行研究の結果では,関係性攻撃や外顕的攻撃を行う幼児は向社会性が低いと評価されていたが,本研究の結果からは,関係性攻撃や外顕的攻撃を行う幼児は,向社会的で社会的情報処理能力にも優れているという新しい見解が得られた。 このことから,関係性攻撃や外顕的攻撃などの攻撃行動は,社会的スキルや社会的情報処理能力が欠如しているために行われるのではなく,むしろ,スキルフルで状況をよく認知できる幼児によって行われていると考えられる。
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Research Products
(1 results)