Research Abstract |
現在,不眠症に対して実施されている認知行動療法(CBT-I)は,(1)心理教育,(2)睡眠衛生,(3)刺激統制法,睡眠制限法,(4)認知療法,(5)リラクセーション法を組み合わせて実施されることが多いが(例えばEspie et al.,2007),その治療効果については十分な検討が行われていない。そこで,CBT-Iに関する無作為化比較試験(RCT)を行った13の研究について,メタ分析を用いたレビューを行った。統制群と比較して,CBT-Iは,中途覚醒時間(WASO),睡眠効率(SE)などの主観的な睡眠指標の改善効果が高く,その効果は12ヶ月後も持続することが明らかとなった。また,睡眠の質を測定する不眠尺度(PSQI)だけでなく,抑うつ症状測定尺度(BDI)についても同様に,改善効果が高いことが明らかとなった。 上記の結果から,CBT-Iを不眠症患者に実施することは有用であると考えられたため,CBT-Iの治療マニュアルを作成した。そして,本クリニックを受診した,睡眠薬服用中の慢性不眠症患者8名に対して,マニュアルを用いたCBT-Iを実施した(1セッション60分,合計6〜8セッション)。その結果,睡眠の質を測定する尺度(PSQI,AIS)は治療後,1ヶ月後に有意な減少を示し,抑うつ症状測定尺度(SDS)も治療後に有意な減少を示した。また,SEは治療後,1ヶ月後に有意に高まり,入眠潜時(SOL),総覚醒時間(TWT),日中の支障度も治療後に有意な減少を示した。治療後に臨床的な改善に至った者は71%であり,1ヶ月後もその効果が持続していた者は50%であった。さらに,参加者中86%が睡眠薬の漸減を開始するに至った。
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