2009 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能角度分解光電子分光による電子型銅酸化物高温超伝導体の微細電子構造の研究
Project/Area Number |
20840002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
RICHARD Pierre Tohoku University, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (70513828)
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Keywords | 角度分解光電子分光 / 超伝導 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き様々な超伝導体試料、とりわけ最近発見された鉄系高温超伝導体について高分解能角度分解光電子分光実験を行った。鉄系高温超伝導体は2年前に本国で発見されて以来、国内外において現在も物性物理の主要研究対象となっており、銅酸化物系も含めた統一的な高温超伝導機構の理解のために極めて重要で研究の緊急性が高い物質群である。本年度に行った高分解能角度分解光電子分光実験により、電子ドープ型試料のバンド構造と超伝導ギャップを世界に先駆けて決定する事に成功した。実験の結果、ブリルアンゾーンの中心にあるホール面が、ゾーン境界に位置する電子面と良いネスティング条件を満たすときに、両フェルミ面において大きな超伝導ギャップが開く事を見出した。この超伝導ギャップには明確な異方性は無く(s波対称性)、そのサイズはフェルミ面のみに依る。さらに、過剰ドープ試料における実験から、ドープするキャリアの符号に依らず、フェルミ面のネスティング条件が大きく損なわれると超伝導が発現しない事を見出した。また、超伝導母物質における実験において、単層グラファイトなどで盛んに議論されている「ディラックコーン」と類似の電子構造を観測した。鉄系超伝導体のディラックコーンは、単層グラファイトと異なり大きな異方性を持っており、母物質の特異物性に大きな関わりを持つと考えられる。さらに、銅酸化物高温超伝導体について擬ギャップ構造の詳細な温度・波数依存性を測定し、擬ギャップがフェルミ面全体において超伝導ギャップと明確な連続性を持つ事を見出した。これらの実験結果は、電子構造におけるフェルミオロジーが高温超伝導を発現させる重要なパラメーターとなっている事を示唆するものであり、鉄ニクタイドおよび銅酸化物を含めた高温超伝導体の超伝導発現機構の解明を進めていく上で重要な知見であると考えられる。
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