2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20840006
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
戸田 幸伸 The University of Tokyo, 数物連携宇宙研究機構, 特任准教授 (20503882)
|
Keywords | 導来圈 / 安定性条件 / Donaldson-Thomas不変量 |
Research Abstract |
本年度は、3次元カラビーヤウ多様体の連接層の導来圏上の安定性条件、及び安定対象の数え上げ不変量に関する研究を行った。導来圈の安定性条件の理論は2002年にBridgeland氏により導入された概念であり、物理学者のDouglas氏の議論を数学的に定式化したものである。更にこれは、通常の連接層の安定性条件の一般化や弦理論的ケーラーモジュライ空間の数学的定式化など、様々な意味で重要な概念である。その一方で、安定性条件に関する研究は3次元以上の代数多様体については非常に困難であり、現在のところ3次元カラビーヤウ多様体上に安定性条件が存在するかどうかは未解決の問題である。私は昨年度にBridgelandの安定性条件の定義を変えた「極限安定性条件」という概念を導入し、対応する安定対象について研究した。これは弦理論的ケーラーモジュライ空間における「極大体積極限」に対応すべき安定性条件である。本年度は更に推し進めて、一般の三角圏に対して「弱安定性条件」の概念を導入し、弱安定性条件全体の集合が複素多様体になることを示した。(Bridgelandの安定性条件の基本定理のアナロジーである。)3次元カラビーヤウ多様体上にこの弱安定性条件を構成することは容易であり、そのため様々な安定対象を研究することが可能となった。更に私は弱安定性条件について安定な対象のモジュライ空間、及び対応するDonaldson-Thomas型の不変量を構築し、これが弱安定性条件を変えたときにどの様に振る舞うか調べた。結果、弱安定性条件の空間には壁と領域の構造が存在し、壁を超えるごとに生成関数が積に分解することを示した。これを応用して、Pandharipande-Thomasによる安定対の数え上げ不変量の生成関数とDonaldson-Thomas不変量の生成関数に関する予想のオイラー数バージョンを証明した。更に生成関数の有理性予想もこの方法で証明可能となった。
|