2008 Fiscal Year Annual Research Report
幾何学的フラストレーションの強い系におけるスピン液体状態の研究
Project/Area Number |
20840026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 穣 Kyoto University, 理学研究科, 助教 (10464207)
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Keywords | 磁性 / 物性実験 / 低温物性 |
Research Abstract |
反強磁性的に相互作用する大きさ1/2のスピンが二次元三角格子状に配置されたときの基底状態と最低エネルギー励起を調べるためにスピン液体状態を示すことがわかっている有機物質κ-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3の熱伝導率測定を100mK以下の極低温まで行った。良い接触抵抗を得られるための工夫をした結果、80mKまで信頼できる測定ができるようになり、その熱伝導率の結果からこのスピン液体はある種のスピンギャップを持つ物質であることがわかった。また測定のノウハウを確立することで複数の試料で再現性の良い結果を10Kまでの広い温度範囲にわたって得ることができ、スピンギャップのあるスピン液体状態であることがはじめて確立された。6K付近に相転移を示唆するようなピーク構造を示すことも始めて発見された。このスピンギャップの大きさが特徴的なエネルギースケールと比べて非常に小さいことがわかった。これらはこの物質の基底状態を調べる上で大変意義深い結果である。 上記の結果を予想以上に早く得ることができたために、類似のスピン液体物質であるEtMe3Sb[Pd(dmit)2]2]についても測定を始めることができた。κ-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3の時と同様に端子付けの最適化などの測定のノウハウを確立するところから始めて、予備的な結果を得るところまで行うことができた。驚くべきことにκ-(BEDT-TTF)2Cu2(CN)3とは全く違う熱伝導率の温度依存性を示唆する結果が既に現れており、今年度の研究の展開に非常に期待が持てる。
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Research Products
(5 results)