2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20840027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂上 貴洋 Kyoto University, 福井謙一記念研究センター, 研究員 (30512959)
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Keywords | 高分子鎖 / 折り畳み転移 / ソフトマター / ダイナミクス / 非平衡 / 生物物理 |
Research Abstract |
今年度は、長鎖DNAの高次構造レベルにおける物理化学的性質について基礎的な研究を進めた。特に、(1)折り畳み転移における新規構造の発見とその安定性の解析、(2)高分子鎖の減圧過程(decompression process)のダイナミクスの理論的定式化を行った。以下、詳細を述べる。 (1) DNAの折り畳み転移は、物理的見地のみならず、その生物学的重要性からも、これまで研究が進められてきた。DNAは条件に応じて、コンパクトに折り畳まれた凝縮状態をとるが、近年の一分子観測技術の発展により、凝縮構造には多様な可能性があることがわかってきている。所謂、理想化された高分子モデルの折り畳みでは、このような多様な凝縮構造の存在は説明できず、その意味で、従来の高分子物理学の知見と、DNAにおいて観測される現象にはギャップがあるといえる。本研究では、モンテカルロシュミレーションにより、「局所的には硬いが十分長い鎖」は、一般的に折り畳みにより、core-shell構造という凝縮コアとそのまわりのフリンジから成る新規な構造を形成することを初めて示し、その構造特性や安定性を議論した。(2)外的要因により、密に凝縮された高分子鎖(たとえば、核内という微小空間に存在するDNAや、ネイティブ構造のタンパク質など)を考える。いったん、外的要因が外されると、これらの鎖は空間的に広がった高エントロピー状態へと緩和していく。このような高分子鎖のdecompression過程を記述する一般理論を数学的に定式化し、これを高分子鎖の(a)脱凝縮(unfolding)と(b)小さな穴からの放出(ejection)の問題に適用した。特に、ejectionについては近年多くの研究があり、様々なデータが報告されているが、それらを統一的に説明することが可能となった。
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