2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20840027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂上 貴洋 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 助教 (30512959)
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Keywords | 高分子鎖 / 一分子実験 / 折り畳み / 生体高分子 / translocation / 微小空間 / 細胞モデル / 核モデル |
Research Abstract |
近年の実験技術の進展により、DNAやタンパク質などの生体高分子の振る舞いを一分子レベルで観測し、操作することが可能となってきている。このような背景のもと、本研究では、一分子レベルでの生体高分子の振舞いを記述する理論的枠組みを構築、整備した。基礎物性のみならず、それを通じての生命科学における応用や生物学的意義も念頭に置き、物理学的視点からの提案を行った。 1、 高分子鎖の脱凝縮過程のダイナミクス:数多くある高分子鎖の折り畳み過程についての研究に対し、どういうわけか逆過程(unfolding)についての研究はあまり見受けられない。しかし、foldingと同様、unfoldingも高分子科学における基礎的問題である。unfoldingをより広い視点からdecompression過程として捉え、それは一般的に非線形拡散方程式により記述されることを示した。unfolding過程以外の例として、壁にあいた微小な穴から抜け出ていくejection過程も解析し、それらの特徴的緩和時間や動的指数を導出した。 2、 長鎖DNAの折り畳み転移:長鎖DNAの折り畳み転移の研究においては、長鎖故の膨大な内部自由度と共に、分子鎖の局所的硬さによる、凝縮状態における方向秩序(配向)の可能性を考慮することが本質的に重要となる。本研究では、有効に配置空間を探索出来るMonte Carloアルゴリズムを用い、長鎖においては、配向秩序を有するcoreがコイル状のfringeにより囲まれたcore-shell構造が、あるパラメータ領域で安定に出現することを見出し、それにより、折り畳み転移の様相が大きく変わることを示した。 3、 微小空間内に於ける生体高分子混合系の構造形成:マイクロメートルスケールの微小空間に、濃厚DNAとF-actinの混合溶液を封入すると、バルクでは見られない特異な相分離挙動と構造形成が観察される。これについて、F-actinの持続長と微小空間のスケールとの競合により生ずる、F-actinが入り込めない領域(exclusion zone)に着目し、バルクでの現象と比較しながら観測結果の定性的理解を得た。この系は、primitiveな意味での細胞核環境の模倣系と見なすことが出来、得られた結果は、生物学的にも興味深いと期待される。
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[Presentation] Two topics on diffusion2009
Author(s)
坂上貴洋
Organizer
The 5th Kyushu University-Pukyong Natl University Joint Symposium on Sciences
Place of Presentation
College of Natural Sciences, Pukyong National University
Year and Date
2009-11-13
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