2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20840028
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 清尚 Osaka University, 大学院・理学研究科, 助教 (60511003)
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Keywords | 強相関電子系 / 酸化物高温超伝導 / テラヘルツ / 光学測定 / 低温物性 |
Research Abstract |
本研究では、これまで適切な発生・検出技術が存在せず未踏の領域と呼ばれていたテラヘルツ波に着目し、分光測定に用いることで従来の外挿を必要としないまったく新しい分光システムを構築し、高温超伝導体の分光測定に用いることで、低エネルギーの電子状態を解明することを目的としてきた。今年度は昨年度に引き続き、現有する反射型テラヘルツ時間領域分光装置の冷却機構の変更、それに伴う試料室周りの改良により、実験精度の向上に取り組んだ。装置の改良により、これまで問題となっていた測定中の試料の振動を12μmから1μmまでに低減させることに成功した。また試料の位置を10nmのオーダーで監視する測長計を導入することで反射型の装置特有の問題である位相問題を解決し、測定精度を大幅に向上させることに成功した。さらに試料室直前の放物面鏡の変更によりテラヘルツ光のスポットサイズを2mm以下に絞ることができるようになり、小さ試料の測定が可能となった。 測定精度の向上した反射型テラヘルツ時間領域分光装置を用い、高温超導体試料La_<2-x>Sr_xCuO_4のx=0.10, 0.12, 0.13, 0.15の試料の測定を行った。c軸偏光の反射率を測定したところ、スピン・電荷のストライプ秩序が報告されているx=0.13の試料でのみ、これまで報告されていないダブルジョセフソンプラズマ的な振る舞いがあることを発見した。この特徴的なピーク構造の起源を探るため、ストライプ秩序がより安定化している(La, Eu, Sr)_2CuO_4のc軸偏光の反射率を測定したが、同種のピークは観測されなかった。従って、問題のピーリ構造は、ストライプ秩序によるものではなく、結晶中に何らかの理由でT'214構造が混じってしまったためではないかと推測される。 La_<2-x>Sr_xCuO_4の結果については国際会議で発表し、投稿論文の形にまとめた。
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