2009 Fiscal Year Annual Research Report
黄鉄鉱中に存在する重金属元素のナノ・原子レベル解析
Project/Area Number |
20840035
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宇都宮 聡 Kyushu University, 理学研究院, 准教授 (40452792)
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Keywords | arsenian pyrite / Carlin-type deposit / Nano-scale / Toxic metals |
Research Abstract |
本研究課題は、浅熱水性鉱床においてAuなど貴金属元素の主要なホスト鉱物であるarsenian pyrite, Fe(As^<-1>, S)_2中の貴金属、有害重金属存在状態を原子・ナノレベルの分析から明らかにすることを目標にした。本年度の実行計画に基づき、カーリンタイプ・熱水タイプ鉱床の観察・分析を継続して行った。また、これら有害金属を含むpyriteの表層環境中における変質過程を解明するためにAsと硫化物の相互作用の実験も行った。 Pueblo Viejo(ドミニカ共和国)とYanacocha(ペルー)は高sulfidation-Au-Ag鉱床で、マグマティックな蒸気プルームとの相互作用で生成したと考えられているが、その主要構成鉱物であるpyriteのEMPA、SIMSを用いた分析から、3つのタイプの成長ゾーンが存在することが分かった。ひとつは、Au, Ag, Sb, Te, Pbに富むAs-richゾーンで、2つめはそれら重金属の含有量が極端に低いCu-richゾーン、3つめはどの重元素もほとんど含まないpyriteのゾーンであった。これらの明確なゾーン形成はpyrite生成流体とマグマ蒸気の断続的な混合によるものと考えられ、As-richな高温のマグマ蒸気と低温なCu-rich気相によるものであることが示唆された。 さらに、Asと硫化鉄の相互作用を調べるために、無酸素条件下においてmackinawite(FeSm)とAs^<3+>反応実験をpH=5と9、室温でおこない、生成物を透過型電子顕微鏡とX線光電子分光法で分析した。pH5では非晶質のAs硫化物が沈殿し、そのAsの酸化状態はrealgarに類似した。一方pH9において非晶質As硫化物は生成せず、As oxyanionがmackinawite表面にほぼ均一に吸着していることが分かり、これらの結果から、redoxプロセスと相転移のpH依存性が明らかになった。 最後に、この2年間の研究で得られた成果を基に、チリ大学、オーストラリアCSIROとともに2010年ゴールドシュミット会議において、本研究のテーマに関するセッションを立ち上げることに成功した。
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Research Products
(3 results)