2008 Fiscal Year Annual Research Report
電場下の高周波電子スピン共鳴を用いた強相関磁性有機絶縁体の巨大電磁気応答の解明
Project/Area Number |
20840044
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
木俣 基 National Institute for Materials Science, ナノ物質ラボ, NIMSポスドク研究員 (20462517)
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Keywords | 強相関電子系 / 物性実験 / 電子スピン共鳴 / 巨大磁気抵抗 / 非線形伝導 |
Research Abstract |
磁性(スピン)と伝導(電荷)の結合した現象は現代の物性物理学における重要な課題の一つである.しかし、磁気抵抗効果に代表されるように、従来の研究では系の電荷状態の磁場依存性を調べる研究が主であって、スピン状態の電場依存性を調べる研究はほとんど行われていない。特に、電荷秩序系として知られる、強相関効果によって絶縁化した一部の有機絶縁体では巨大な非線形伝導現象が観測されており、系の電子状態が電場によって大きく変化している事が充分に考えられる。本研究ではその中でも磁性イオンを含む系を中心に、電子状態を電場で変化させた場合にスピン状態がどのように変化するかを調べることを目的とする。具体的な試料としては鉄フタロシアニン伝導体TTP[Fe(Pc)(CN)_2]_2や磁性有機伝導体λ-(BETS)_2FeCl_4等を対象とする. 平成20年度はTTP[Fe(Pc)(CN)_2]_2において磁気抵抗,電流電圧特性,磁気トルクの詳細な測定と,電場を印加しない状態でのESR測定を行った.まず磁気抵抗と磁気トルク測定からは,低温で発現する巨大な負の磁気抵抗の起源が何らかの磁気転移による物である事が明らかになった.また,電流電圧特性の測定と解析から,電子間クーロン相互作用の次元性が,磁気転移によって変化する事を見いだした.これまで,クーロン相互作用の次元性は,結晶格子や原子(分子)軌道の異方性のみにから決まると考えられていたが,本研究によって物質中の磁気(スピン)状態もクーロン相互作用の異方性に寄与することが明らかになった.この効果は磁性と電荷の新しい相関効果であると考えられる.ESR測定からは非常に大きなg値の異方性を観測し,磁気抵抗効果の角度依存性がg値の主値の異方性によってほぼ説明できる事が明らかになった.平成21年度は,電場を印加した状態でのESR測定を行い,スピン状態の電場依存性を調べる予定である.
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