2008 Fiscal Year Annual Research Report
共役多座配位子からなる希土類ネットワーク磁性錯体および大環状磁性錯体の構築
Project/Area Number |
20850009
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中林 耕二 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (80466797)
|
Keywords | 希土類 / 強磁性 / ネットワーク錯体 / ホルミウム / 超交換相互作用 / イオン交換 / 単結晶構造解析 / 多座配位子 |
Research Abstract |
希土類金属イオンを含む錯体は、精密設計が可能な磁気材料、蛍光材料、触媒として興味が持たれている。近年、単核や1次元、二次元構造を有する希土類錯体が数多く報告されているが、三次元ネットワーク構造を有する希土類錯体の報告例は少ない。これは、希土類イオンの配位の多様性を制御することが難しく、一義的な構造を得るのが困難であるからである。磁性体本研究では、共役多座配位子1,2,4,5-tetrahydroxybenzene(THB)を用い、配位方向を制限することにより一義的な構造を持った三次元ネットワーク希土類金属錯体Na_5[Ho(THB^<4->)_2]・7H_20を合成することに成功した。この錯体は、キュリー温度11 K、保磁力170 Oe を有する強磁性であることが明らかになった。これは、希土類金属イオンのみからなる錯体で強磁性転移を示す初めての例である。 合成は、塩基性条件下で行うことにより、目的の化合物を黒色結晶として得た。構造解析は単結晶構造解析により行った。一つのHo^<3+>イオンに4つのTHBが2座配位しており、計8個の酸素原子が配位した、dodecahedron(D_<4d>対称)構造をとっていた。 Ho-Ho間距離は8.7Åであり、またc軸方向には4.9×4.9Åのチャンネル構造を有していることが明らかになった。チャンネル内は、H_2O分子およびNa^+イオンが存在していた。またキュリー温度より、分子磁場理論を用いて計算されたHo^<3+>イオン間の超交換相互作用j<Ho-Ho>は+1.0 cm^<-1>であり、過去に報告されている3d-4fネットワーク錯体HoFe(CN)_6(Tc=1.3K, j<Ho-Fe>=-1.0×10^<-1>cm^<-1>), HoCr(CN)_6(Tc=1.7K, j<Ho-Cr>=-1.2×10<-l> cm<-l>)の値より大きなものであった。これは、Ho<3+>イオンの4f軌道とTHB配位子のπ軌道との統合性が強いことに由来すると考えられる。
|