2008 Fiscal Year Annual Research Report
脆弱な分子凝縮体の延伸下物性及び、電荷整列・有機超伝導の新展開
Project/Area Number |
20850024
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 貴 Osaka University, 理学研究科, 助教 (20511017)
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Keywords | 分子性固体 / 伝導性 / 磁性 / 延伸下物性 / 電荷整列 |
Research Abstract |
研究課題にあるテーマは、以下の3つに分割できる。A:脆弱な分子凝縮体の延伸下物性、B:分子伝導体の超伝導機構の再構築、C:新規の電荷整列メカニズムの探索。本年度は、BとCに関して大きな進展があった。Aのテーマでも、延伸下磁性観測に向けた準備を行うことができた。 A:本申請者は、圧力実験では成し得ない相転移を実現すべく、「異方的延伸」を行っている。延伸下抵抗率測定機構の成功に続き、磁化率の測定手法開発を目指している。本年度は、装置作成するための工作機械と測定装置の整備を行い、延伸下でもシグナルを検知できる機構を検討した。 B:分子凝縮体の超伝導の作動原理は、伝統的機構だけでなく、電荷揺らぎ等、他の機構も提唱されている。そこで、[Pd(dmit)_2]_2X(Xは陽イオン)分子凝縮体群に着目し、分光学的手法にて、超伝導に至る揺らぎを発生させる原因を探す研究を行った。その結果、スピンだけでなく、電荷、格子、分子軌道準位も、揺らぐことを見出した。これらが、競合・結合することで、多様な基底状態(超伝導も含めて)を取る。各々の機構は、必ずしも背反するとは限らないことを示唆しており、分子凝縮体の超伝導機構の再構築という点で意義深い。 C:電荷整列を示す分子凝縮体でスイッチングを起こすためには、電荷の整列エネルギー準位の縮退を僅かに解く因子が必要である。そこで、縮退にまつわる因子として、分子間の水素結合や、磁性との協同現象を探索した。上記の目的を達成するため、アミド結合を持つドナー分子からなる電荷移動塩を、分光学的手法にて調べた。その結果、水素結合の秩序化と、電荷整列、反強磁性が共存する物質であることを突き止めた。この結果は、分子性多機能物質の構築に向けた有用な情報を提供できる、と言う点で重要である。 この他にも、他の分子凝縮体に関する実験や計算を行った。
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Research Products
(5 results)