2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20850030
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
高瀬 雅祥 Tokyo Metropolitan University, 大学院・理工学研究科, 助教 (90516121)
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Keywords | グラフェン / 含窒素グラフェン / π電子共役系 / テトラチアフルバレン / 超分子集合体 |
Research Abstract |
本研究課題では、得られる幾何学的構造が予測可能な有機合成化学反応を用いて、窒素原子を明確な位置に導入したグラフェンシート構造体の構築を目指している。π電子共役系ネットワークを維持しながら、つまり、炭素のみからなる従来のグラフェンシートが有する物性及び構造的特徴を維持しながら、窒素原子の導入による新規物性の発現とその制御を可能にすることを本研究の最終目的としている。昨年度に引き続き本年度は、ピロールを縮環させたテトラチアフルバレン(TTF)誘導体を基本骨格に用い、本ユニットを放射状に3,4,6個導入した分子の合成とその酸化還元特性、ならびにこれら一連の分子が形成する超分子集合体についての検討を行った。サイクリックボルタモメトリー法により、一連の分子は中央のベンゼン環を介したTTF間の共役がほとんど繋がっていないことが示唆され、酸化剤を段階的に滴下した吸収スペクトル変化からは、いずれの分子も中性→カチオンラジカル→ジカチオンへの段階的な変化を示し、カチオンラジカル種が分子内で非局在化しないことが分かった。その一方、分子内の全てのTTF部位をカチオンラジカル状態にすると、容易に分子間でπダイマーを形成することが明らかとなった。この結果をもとに、今回合成した一連の分子の富溶媒-貧溶媒の溶媒均一法によって得られた超分子集合体のヨウ素ドープ下での電導度測定を行ったところ、比較的良好な値を示すことが分かった。またこの伝導度は、単にフィルムにした物と比べても一桁ほど高い値であることが分かった。さらに、上記で用いた基本ユニットを二官能基化させ、二カ所で反応可能なユニットを用いてシート状構造体の構築を検討したところ、あらゆる有機溶媒に不要の析出物が得られている。現在までにその構造に関する詳細な知見は得られていないため、今後引き続き構造の解析を行っていく必要がある。
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