2009 Fiscal Year Annual Research Report
マルチプローブ高密度記録のための分子レベルで構築された導電性高分子記録媒体の研究
Project/Area Number |
20860005
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉田 慎哉 Tohoku University, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (30509691)
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Keywords | マルチプローブ超高密度記録 / 分子層堆積 / MEMS |
Research Abstract |
本年度は、導電性スイッチング高分子記録媒体の作製のための分子層堆積装置を自作した。分子層堆積法は、高分子の原料となるモノマーを単分子層ずつ基板表面へ結合させて高分子薄膜を形成させる方法である。成膜過程において、表面化学反応の自己停止機構が作用する為、一分子層レベルの均一な膜厚制御が可能となり、分子鎖が垂直配向した超均一な高分子薄膜を成膜する事ができる。 導電性スイッチング高分子として芳香族ポリイミドを合成・成膜した。このポリイミドは通常絶縁性であるが、適切な修飾電圧を印加すると、電荷トラップもしくは電子供与基-求引基間での電荷移動が誘起されて導電性に転移する。この導電性変化を、本研究では記録情報として利用する。成膜実験の結果、4-アミノチオフェノールで修飾したAu表面に対して成膜することにより、密着性に優れた表面粗さ1nm以下の極めて均一なポリイミド薄膜の成膜に成功した。そして、成膜したポリイミド薄膜に対して走査型プローブ顕微鏡を用いて超高真空中での電気的修飾実験を行った。その結果、ポリイミド薄膜の導電性を、ナノメートルスケールで4~5桁変化させることに成功した。すなわち、本記録原理は、高い信号/雑音比の確保と高速の記録読み出しが期待できることを実証した。また、超高真空中において電気的修飾が可能であるということから、本記録メカニズムは化学反応を伴わない純電気的な物理現象を利用していることを実証した。これは、記録媒体の劣化低減を目的とした、不活性ガス雰囲気などでパッケージングした記録システムを構築できることを示唆する結果である。記録安定性などは、芳香族ポリイミドの分子構造を最適化することによって改善することができると考えられる。
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